多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

古き良き北京の居酒屋、「大酒甕」、金受申

「大酒甕」は北京情緒たっぷりだ。「大酒甕」を経営するのは大部分が山西の人で、パイカル

の小売りを主な業務にしている。酒を貯蔵するのに甕を使うのだが、大甕と二甕の二種類ある。甕の上に朱色の蓋を置き、それをテーブルとして使うのである。華やかな明かりがともり、北風が吹きすさぶと、善良な人々が甕のそばに集って飲むのだが、十年の夢にも値する。北京っ子たちは、「大酒甕」で酒を飲むなら甕のそばで飲むに限ると考えている。「大酒甕」で出す酒はきちんとした「官酒」で、変な混ぜ物は入っていない。「大酒甕」が人をひきつけるのは、小皿のつまみとその場で売っている食品があるからだ。下層階級の人に愛されているだけではなく、詩意に富むとして文人墨客にも好まれている。「大酒甕」のつまみには「自家製」と「注文」の二つがあり、「自家製」は「常備」と「臨時」の二種に分かれる。たとえばピーナッツ、豆腐干、

ハクサイ、トウチ豆腐

などがいつも備わっている「常備」で、氷キュウリ、氷キュウケイカンラン、春雨のあえもの、ホウレンソウのあえもの、蒸しカニなどは「臨時」だ。羊の焼き肉を出す「大酒甕」もある。酒を飲んだ後、羊の焼き肉にネギを添えて食べるのはなかなかいい。魚の煮込みを出すところもある。終日火にかけたもので、スープと一緒に食べる。暖かさと寒さの入り混じる日暮れ時、冷たいつまみで飲んだ後、温かいスープと一緒に魚を食べるのは、食欲を増すだけでなく酔いを醒ます効果もある。寂莫たる黄昏時、一人でよろよろ「大酒甕」に入る。小皿のつまみがテーブルいっぱいに並び、様々な香りが入り混じる中、パイカルを腹に入れる。ほろ酔いでいい気分になるが金はあまりかからない。まさに貧乏人のよきストレス解消法だ。

 「大酒甕」には「自家製」のつまみのほかに、「注文」のつまみもある。「注文」といっても外のレストランに注文するのではない。「大酒甕」の門の外には多くの屋台が「寄生」し、「大酒甕」にない様々なつまみを売っているのである。
 他に「大酒甕」では「清水餃子」

も作る。餡は季節に応じて変わり、一角で二十個買える。「餃子で酒を飲めばいくらでも腹に入る」というが、油が少なくて渋くないのがいいところで、「大酒甕」を象徴する料理だ。「焼ワンタン」というのもある。おいしいスープはないが、「貧乏人の美食」だ。山西の人がやっている「大酒甕」なら、山西の名物料理「刀削麺」

と「抜魚児」

を出している。

 「大酒甕」は平民化された食品で繁栄を維持している。が、「大酒甕」の大部分が街路に面し、飲み客を看板のようにしているのは、優雅ではない。東四牌楼の「恒和慶」と東安門丁字街の「義聚成」だけが内側に席を設置し、きちんとした人たちに評価されているようだ。
 北京の上等パイカルといえば、「都一処」の「蒸酒」が一番で、「東西来順」と「両益軒」の「伏酒」がその次だ。北京でパイカルを産するところは四路に分かれる。南路の採育鎮と長辛店、北路の麗水橋、東路の西集と燕郊、西路の黒竜潭などだ。

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