多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

臘肉(中華風燻製肉)、梁実秋

 塩漬肉を燻して作る。旧暦十二月(臘月)の終わりか旧正月の初めに取り出して食べるので、臘肉と呼ぶ。

 湖南の臘肉が最も有名だが、店舗ではなく、一般の人の家でこそ真の臘肉が味わえる。臘肉はもともと我々の農村社会の家庭の産品で、長く保存でき、自分たちでも食べるし、接客にも使う。それは「一年を通した」普通の習俗だった。

 真の素晴らしい臘肉は、一度しか食べたことがない。抗日戦争初期、長沙を出て、湘潭にいる友人を訪ねた。小さな汽船で川を遡上した。すでに初夏だったが、「春なような川の水と草」が素晴らしかった。友人の家は湘潭市の柳絲巷二号にあった。門を入ると、アオギリの大木が一本見えた。建物が中庭を囲んで立っていた。晩、友人の家に泊まったが、ご馳走でもてなしてくれた。その中に臘肉と臘魚(燻製魚)があった。厨房を見せてもらって、驚いた。客間より広いが、きちんと整頓され、チリ一つなかった。梁には臘鶏

や臘アヒル、

臘魚

や臘肉がぶら下がり、地面に積まれた木の枝葉から煙が立ち昇っていた。燻製で最も重要なのは、煙でいぶす過程だ。暖かな煙で何日もいぶし続けると、肉は黒くなり、独特の味がこもる。煙は煙突から出ていくので、厨房内の空気はきれいだ。

 臘肉をきれいに洗ったあと、そのまま蒸す。蒸したあと薄切りにし、葉ニンニクと茎ニンニクを加えて炒める。赤トウガラシを加えるのもいい。

葉ニンニクがなければネギを使ってもいい。その晩湘潭の友人の家で食べた臘肉には、主も客も楽しんだ。「温州酒汗」という汾酒よりやや度が低く、貴州のマオタイに近い蒸留酒を飲んだ。それ以降色々なレストランで炒めた臘肉を食べたが、この時のものとは比べ物にならない。そして臘魚の美味しさは臘肉を上回るものだった。飲んで食べて、めったにない楽しみを味わった。

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