多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

2020年8月のブログ記事

  • 豆腐の様々な調理法(一)、汪曾祺

    豆腐は硬めのものを北豆腐と言い、柔らかめなものを南豆腐と言う。もっと柔らかいのが豆腐脳だ。 豆腐脳より少し硬いものが北京の「老豆腐」と四川の「豆花」だ。豆腐脳より柔らかいものが、湖南の水豆腐だ。  豆腐を型に入れて圧力を加えたものが、豆腐干だ。  豆乳を煮た時に表面に凝結した膜を掬い取って陰干しに... 続きをみる

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  • 北京の伝統飲料「豆汁」、汪曾祺

     豆汁を飲まなければ、北京に来たとは言えない。  子供の頃「豆汁記」という京劇を見たが、「豆汁」がどういうものかわからなかった。豆乳のことだと思っていた。  北京に来てから、友人にあぶったアヒルや肉、羊肉のしゃぶしゃぶをご馳走になったとき、「豆汁を飲むかい?」と尋ねられた。私は「なんでも食べる」タ... 続きをみる

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  • 北京の伝統食、面茶(中国のサイト)

     北京の「面茶」という軽食は、おいしくて簡単に作れる。朝食としてとれば、一定の熱量を持っているので、一碗で一日中元気だ。  かつての北京っ子は面茶を飲むとき工夫を凝らした。碗を持っても箸もしゃもじも使わず、碗のふちをぐるぐる回して口の中に吸い込んだ。これは伝統的なやり方で、北京特有の文化だろう。 ... 続きをみる

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  • 擂茶を飲む、汪曾祺

     旅行鞄を置くと、文化局の同志が擂茶を飲みに行こうと誘いに来た。 以前から擂茶の名は聞いており、今回ここに来たのも半分は擂茶のためだ。思わぬことに列車を降りた後、最初に擂茶を飲みに行けることになったので、当然うれしい。茶の葉、ショウガ、ゴマ、米に塩を加えてすり鉢に入れ、硬い木の棒で作ったすりこぎで... 続きをみる

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  • 秋の果物と野菜、汪曾祺

     中国人は物を食べる時、色と香りと味を大切にする。色と味については書いたことがあるので、今は香りの話をする。  江陰にいくつか果物店があるが、最も大きいのは正街正面の寿山公園にある店だ。種類が多く、大きくて新鮮なものを売っている。中に入ると、濃い果物の香りが鼻を打つ。最も突出しているのはバナナの甘... 続きをみる

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  • よく作る酒のつまみ、汪曾祺

     ふだんの酒のつまみに必要なのは、新しさと金がかからないこと、簡単に作れることの三つだ。たまの客が来ると、酒を飲みたくなる。主は袖をまくり上げて厨房に行き、ネギやショウガを切ったり調味料を作ったりしつつ、客とおしゃべりをし、落ち着き払って平然としているのがいい。主があわただしくしていると、客も落ち... 続きをみる

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  • 羊の手づかみ肉、汪曾祺

     モンゴル人は子供の頃から羊肉を食べ慣れており、数日食べないと落ち着かなくなる、  八、九月は草原が一番美しい。ひと夏の雨を経て、草が皆育ち、草原はまさに碧緑となる。至る所に様々な色の花が咲き、羊は脂身をつける、  内モンゴルの作家はこの時期に草原に行き、生活を体験し、調査を行うことを好む。「秋の... 続きをみる

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  • 秋の北京のあぶり肉、汪曾祺

     夏になると食欲がなくなり、薄味で簡単な料理を食べるようになる。ごまペースト麺(湯がいてキュウリの千切りを加え、サンショウ油をたらしたもの)や刻んだネギを練り込んだクレープ、緑豆粥などだ。 二ヶ月か三ヶ月経つと、体重が少し減る。秋風が吹くと食欲が出てきて、いいものを食べて栄養をつけ、夏の補いをしよ... 続きをみる

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  • 昆明の鶏肉料理、汪曾祺

     中国には様々な鶏の食べ方がある。全国のいろいろな食べ方のコンテストをやれば、金メダルを取るのはどんな食べ方か?私は昆明の「鶏肉の蒸気鍋炊き 」だと思う。  誰がこういうユニークな食べ方を考えたのだろう?たぶんまず蒸気鍋ができて、それから「鶏肉の蒸気鍋炊き」ができたのだろう。蒸気鍋は建水で作ったも... 続きをみる

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  • 干絲(乾燥した豆腐を千切りにしたもの)、汪曾祺

     南京、鎮江、揚州、高郵、淮安には干絲がある。その源は揚州だろう。淮揚料理の代表作の一つで、多くの料理書に記載されている。が、実際は「料理」ではない。ご飯のおかずではなく、茶を飲む時のつまみだ。  揚州一帯の人は朝に茶を飲む習慣がある。「揚州人は朝に茶を飲み、晩に風呂に入る」とも言われている。揚州... 続きをみる

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  • 台湾、豚足食べ歩き、焦桐

    豚足についていえば、私は汁につけて煮たものと焼いたものが好きだ。色合いが魅力的だし、調理の際に漂ってくる香りが臭覚をいざなう。臭覚は味覚に訴え、味覚は知覚に語り掛け、様々な美の快感が楽しくせめぎあう。私はかつて台中の「阿水獅豚足大王」の汁で煮た豚足が好きだった。中に入ると、豚足を漬け込んだ、大きく... 続きをみる

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  • 火腿(中華ハム),汪曾祺

     雲南の宣威火腿と浙江の金華火腿は共に有名で、甲乙つけがたい。金華火腿は多くの人に知られ、種類もも等級も多い。「雪舫蒋腿」は有名だ。より高級なのは、竹の葉でいぶした「竹葉腿」というものだ。宣威火腿はそんなに凝っておらず、なんとなく火腿と呼ばれている。宣威ではそれぞれの家で火 腿を作っているが、集中... 続きをみる

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  • 栗,汪曾祺

     栗はハリネズミのような変わった形をしている。長いトゲの生えたイガの中で何個かがぴったりくっつき、団結して成長する。その中に一つ平たいのがあって「へそ栗」と呼ばれている。味は他のものと同じだ。松かさやクルミ、ギンナンなどナッツ類の外面にはたいてい保護層がついている。リスに食べられないためだろう。 ... 続きをみる

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  • 豚足の話、焦桐

     私の妻の母は豚足料理が得意で、客家の伝統の味だった。まずきれいに処理した豚足にニンニクとハッカクを加え、米酒と醤油に三十分浸す。それに加熱した干しタケノコを加えて蒸すというものだ。干しタケノコが豚足の油を吸い込み、本来の味にそれが加わって、とても美味しくなる。  豚足を焼くのは南方の発明で、浙江... 続きをみる

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  • 臭豆腐(豆腐を発酵させて作る臭みのある食品)、汪曾祺

     中国人以外に、臭いものを好んで食べる人がいるだろうか。  かつて上海、南京、漢口ではすべて臭豆腐を油で揚げたものを売っていた。長沙火宮殿の臭豆腐は、ある大人物が若い時によく食べていたので有名になった。この大人物はのちにそこに行って食べ、「火宮殿の臭豆腐はやはりおいしい」と言った。「文化大革命」の... 続きをみる

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  • ダイズ、汪曾祺

     豆の葉は、古代は野菜として食べていた。おそらくとろみのあるスープにしていたのだろう。その後、誰も食べなくなった。豆の葉のあえものや炒め物など聞いたことがない。  私の故郷では、夏、エダマメを炒め、青トウガラシを加えて、何度か食べた。中秋節になるとエダマメを煮て、月に供えた。さやつきで煮た。父はよ... 続きをみる

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  • 花ニラ、汪曾祺

     北京の花ニラは、漬けたあとひきつぶして、汁と一緒にする。羊肉のしゃぶしゃぶを食べる時の調味料として欠かせないが、漬物としても食べられる。干したオキアミとハクサイの煮物を食べるときに、花ニラか、臭豆腐(塩漬けの豆腐を発酵させたもの)か、エビ味噌を蒸しパンやクレープに塗りつけて口に入れるのは、北京の... 続きをみる

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  • 遅子建、故郷(中国東北地方)の食(二)

     端午節の後の重要な祝日といえば、中秋節だ。中秋節には必ず月餅を食べる。当時商店で売っていた月餅は一種類だけで、ピーナッツやクルミ、白砂糖などを混ぜ合わせた餡を使っていた。現在の五仁月餅に似ており、とても甘かった。子供の頃私は虫歯が多く、月餅を食べて歯がとても痛くなり、みんなが月を愛でている時に大... 続きをみる

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  • 遅子建、故郷(中国東北地方)の食(一)

     北方人は食べるのが好きだ。が、南方人のように工夫を凝らして精緻なものを食べるわけではないので、料理の味は濃く色も暗い。それゆえ宴席に使えるものはとても少ない。しかし一般民衆は宴席料理を必要としているわけではないので、そういう普通の料理こそ私たちが最も好むものだ。  年越しでも祝日でもなければ、ふ... 続きをみる

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  • 江南の軽食、チャンチン、(徐風)

     春になると食欲が出てくる。チャンチンがそろそろ食卓に上がるようになる。高い山の上でチャンチンは寂しく育つ。最も柔らかい時、山はまだ寒く、花もまだ咲いていない。が、チャンチンを好んで食べる人たちは急いで山に登る。チャンチンは紫チャンチンと油チャンチンの二種類がある。紫チャンチンは、優れた質で、やや... 続きをみる

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  • 槐葉の冷淘、杜甫

    約千二百年前の唐時代に「槐葉の冷淘」という暑気を取る食品がありました。エンジュという木の葉を小麦粉と混ぜ、麺にして冷やして食べるというものです。試してみるのもいいかもしれません。杜甫が詩に書いています。    槐葉の冷淘 杜甫  青々と高く茂ったエンジュの葉を摘み、厨房に持っていく。その汁と滓をで... 続きをみる

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  • 江南の夏料理、車前子

     春は、一年の食生活の始まりだ。緑滴るありさまは、とても気持ちいいが、短い。  江南の夏、夕食時になると、人々はテーブルと腰掛を運び出して路地裏に座り、夕食を食べながら、夜風に涼む。あらかじめ井戸水をまいておくが、しばらくすると街灯がともる。黄色く光る電柱と街灯だ。  このとき、人々は薄い味付けを... 続きをみる

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  • 上海ガニの話、鄭逸梅

     ほとんどの人がカニが好きだ。だが、ここ数年、上海ガニはぜいたく品になっており、大切なことや困難なことを頼むときのよき贈り物になっている。私が最後に上海ガニを食べたのはいつだったか、思い出せもしない。秋風が吹くと、「菊の花とカニのはさみを見て楽しむ」ことしかできない。  私は蘇州人だ。蘇州人がカニ... 続きをみる

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  • 温州のビーフン料理、林斤瀾

     米をひいて粉にし、水を混ぜてペースト状にしたものを糸状に切り分ける。それを鍋に入れてじっくり煮て、陰干しにする。南方の省ならどこにでもあるビーフンだ。髪の毛のように細いものは竜の髭とも呼ばれる。  農家が顔なじみや招かれざる客を応接するとき、ビーフンを炒めて出す。どんぶりにてんこ盛りにし、「お粗... 続きをみる

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  • 温州の魚料理、林斤瀾

       魚の料理法は地方によって、調味料も作り方も異なり、とても種類が多い。私は以前は甘いのが一番だめだと思っていた。漢方薬を使うのは、貴重ではあるが正統ではない。酸っぱい料理では、シーサンパンナのタイ族の「酸魚」が独特の風格だ。濃い味付けでは、四川料理が代表的だ。塩辛さや油っこさ、辛さの中に魚肉の... 続きをみる

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  • 粥と人生(三)、張抗抗

     広東に行ってから、粥に関する見識が大いに広がった。白い粥から黄色い粥という「初級レベル」から、色彩豊かな「中級レベル」へ進んだ。粥の効能も飢えを凌ぐという実用性から、美や精神の享受という「高度」へと進んだ。そういう時に「紅楼夢」を再読し、五千年の文明の歴史を持つ中華民族には悠久の粥文化があること... 続きをみる

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  • 粥と人生(二)、張抗抗

     砂糖入りのエンドウマメの粥は粥に関する記憶の中ではかなり幸福なものだ。国家から戻ってきた穀物を毎年食べていた当時の北大荒では、大米の粥は得難いものだった。南方人の「米への思い」は、トウモロコシのまんじゅうやアワ飯の間で徐々に淡くなり、抑圧されていった。やるせなさの中でだんだんわかってきたのだが、... 続きをみる

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  • 粥と人生(一)、張抗抗

     粥は中国では、長江や黄河のように、源が遠く流れが長い。  しかし私は浅学非才なので、粥の歴史を考証することなどできない。幼年時代から今まで粥を食べてきた経験から、その悠久の流れと尽きせぬ魅力を感じているだけだ。多くの中国人にとって、粥は生命の源であり、そこから気力と知恵を得て、様々な習慣を形成し... 続きをみる

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  • 温州人の生食(続)、林斤瀾

     港蟹生のほかに、「白鳣生」というのもある。この「鳣」という字はあまり使われない。私の当て字だ。魚店では「魚生」と書いている。  「白鳣生」は、生の魚肉に糸状に切った大根を加えて塩漬けにしたものを、酒糟で漬けたものだ。赤くてとろりとしたスープと一緒だ。食べるときは、蒸したり鍋に入れたりせずに、酢を... 続きをみる

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  • 温州人の生食、林斤瀾

     温州には生で食べるものがかなり多い。多少の調理はしていても、火を通さないし、熱も加えない。こういう食べ方だったら、「生」という字を後ろに置く必要がある。豆腐生、港蟹生、白鱣生のように。  温州人で、たまに「生」を食べない人がいると、他人に「温州人なのにもったいない」と言われる。温州人は故郷を遠く... 続きをみる

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  • エンドウマメ、汪曾祺

     北市口の炒め物を売っている露店と私の小説「異秉」の王二の露店では、炒めたエンドウマメと油で揚げたエンドウマメを売っている。小さな包み一つが二十文で、塩をふりかけている。食べながら家まで歩くのだが、家に着くころには食べ終わっている。    私の家からあまり離れていない越塘のそばの空き地に、軽食を売... 続きをみる

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  • インゲンマメとアズキ、汪曾祺

    インゲンマメ  昆明で数年間インゲンマメを食べていた。西南聯大の食堂にはいくつかのよく食べるメニューがあった。ブタの血の炒め物、ハクサイの炒め物、灰色のこんにゃく豆腐などだが、ほとんど毎日インゲンマメを煮ていた。府甬道の市場で塩で煮たインゲンマメを売っていたが、時々買って、腹の減った時に食べていた... 続きをみる

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  • フジマメ、汪曾祺

     私の故郷では、フジマメは北京の人の言う「幅広フジマメ」しかない。鄭板橋が「庭に春の雨が降って野菜を潤し、秋風が棚いっぱいのフジマメの花に吹く」と対聯に書いているが、この種のフジマメのことだろう。この対聯はなんとか食べていける程度の人の家のありさまを描いたもので、金持ちの家だったら庭に野菜やフジマ... 続きをみる

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  • 緑豆、汪曾祺

     緑豆は涼の性があるので、夏に緑豆スープや緑豆粥を食べると暑気を払うことができる。  緑豆の最大の用途ははるさめを作ることだ。はるさめは中国の特産だろう。ふつうはるさめはスープに入れて食べる。  外国ではガラス麺と呼ばれている。普通はるさめはスープに入れて食べる。華僑ははるさめをとても好む。故国を... 続きをみる

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  • 最高の飲み物、白湯(食憲鴻秘)

     朝起きたときに、まず白湯を一杯飲むのはとてもいい。夜眠っているときに「火」の気が人体の上部に溜まり、胸や腸がふさがってしまう。白湯を飲んで、その通りをよくすれば、爽やかで伸びやかな気分になる。塩や砂糖をわずかに入れてもいい。薬を服用する時も、先に白湯を一口か二口飲むといい。  人にとって、水は酸... 続きをみる

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