多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

よく作る酒のつまみ、汪曾祺

 ふだんの酒のつまみに必要なのは、新しさと金がかからないこと、簡単に作れることの三つだ。たまの客が来ると、酒を飲みたくなる。主は袖をまくり上げて厨房に行き、ネギやショウガを切ったり調味料を作ったりしつつ、客とおしゃべりをし、落ち着き払って平然としているのがいい。主があわただしくしていると、客も落ち着かず、酒も美味しくない。
1.ホウレンソウのあえもの

 ホウレンソウは北京の大衆的な飲み屋で一番安い酒のつまみだ。湯がいてから一定の長さに切り、一さじのごまペーストとニンニクの汁、もしくはからしの粉を加えていた。現在ではこのタイプの飲み屋は北京にない。
 私が作るホウレンソウのあえものは細かな工夫を凝らしたものだ。ホウレンソウをきれいに洗ってから根を切り落とし、八分目くらいに湯がいてから(じっくり煮るのはよくない)取り出し、冷水をかけてから少し塩を振り、細かく刻んで汁を搾る。それを宝塔の形に皿に盛りつける。あらかじめ豆腐の燻製をコメ粒ほどの大きさに切り、干しむきエビを水につけ、ショウガと芽ニンニクを細かく切っておく。それらを宝塔の形をしたホウレンソウに振りかける。醤油と酢、ごま油と少量の化学調味料を小さな碗の中で混ぜ、宝塔のてっぺんから軽く流す。食べるときは宝塔をたおすと、いろいろな調味料がよく混ざる。
2.ピータンと豆腐のあえもの

 水分が少ない硬めの豆腐を湯がいてから冷まし、、サイコロ状に切ってから塩を少し加える。長期間熟成したピータンもサイコロ状に切り、豆腐とあえる。ショウガをすりつぶしてから水を加えて滓を取り除き、そこにかける。
3.千切りダイコンのあえもの

 ダイコンを洗ってひげを取り去る。皮は取らないこと。斜め方向に包丁を入れて薄切りにし、再度それを千切りにする。細ければ細いほどいい。砂糖を少量入れて少し漬け、皿に盛る。食べるときは、三合油(醤油、酢、ごま油を混ぜたもの)をかけるか、少量のクラゲの皮の千切りとあえると、美味しさが引き立つ。
4.干絲

 干絲は揚州の料理だ。揚州のもののような緊密な質のものは北方では買えないので、薄切りにした後千切りにした乾燥豆腐を代わりに使ってもいい。必ず細く切り、冷水を二度か三度かけ、塩気と豆の臭みを除去しなければならない。
 湯に入れて二度か三度沸騰させた後、取り出して水分を切り、浅い碗に盛る。芽ニンニクを短く切って湯がき、干したむき海老と一緒にその上に置く。五香(サンショウ、八角ウイキョウ、ニッケイ、チョウジのつぼみ、ウイキョウ)ピーナッツの皮膜をむき、周囲にまく。醤油とごま油、少量の酢をかけて混ぜる。
 干絲を煮るときは、鶏のスープか骨のスープを使う。それらがなければ、数切れの赤身肉と脂身を高圧鍋で煮てスープを取ってもいい。だが、必ず肉類からスープを取ること。それに火腿(中華ハム)の千切りと鶏肉の千切りを加える。また、少量の冬シイタケの千切りやタケノコの千切りを加えてもいい。むきエビや干し貝柱もいい。少量の白砂糖を入れると、スープは赤みを帯びる。
 どのケースでも、ショウガの千切りを加えると、益するところが多い。
5.むいたキュウリの皮

 キュウリを短く切り、果物ナイフで外から内まで帯のように薄く切って、巻く。他の部分は使わない。醤油、砂糖、サンショウ、八角、桂皮、コショウ、乾燥赤トウガラシ、化学調味料、料理用酒を均等に混ぜる。薄く切ったキュウリをその汁の中に入れ、箸でよくかき混ぜ、一時間ほど漬けておく。取り出したものを皿に盛る。余った汁を盛ったキュウリにかける。サクサクと噛み応えがある。様々な味がしみとおっているが、キュウリ本来の香りも残っている。
6.炒めトウモロコシ

 昆明の料理だ。柔らかなトウモロコシの粒を取り出し、豚の赤身肉と一緒に炒め、塩を少量入れる。刻んだねぎを使って軽く炒めてもいいが、炒めすぎてはいけない。黒くなると、見た目が悪くなる。醤油はトウモロコシのさわやかな香りを覆い隠すので、使わないほうがいい。
7.腎臓のごまペーストあえ

 ナイフで平たく二切れ切った後、残った臭みのある部分を捨てる。切ったものを冷水に浸し、頻繁に水を替えて、血などを取り除く。腎臓を切ったものを湯がくときは、湯を多くする。湯が沸騰したら、腎臓を切ったものを湯の中に沈め、すぐに網杓子で取り出す。一度湯がいたらその湯を捨てて、鍋をきれいに洗い、新たに湯を入れて沸かし、もう一度腎臓を入れて湯がく。すぐに取り出して、冷水に浸す。二度湯がくと、腎臓には十分熱が通るが、サクサクした柔らかさも残る。腎臓が冷めると、水分を絞り出し、皿に入れ、ごまペーストやネギのみじん切り、ショウガ、おろしニンニクなどをかける。
8.ひれ肉のあえもの

 ひれ肉を薄切りにし、オニバスの実から作ったでんぷんで包む。鍋で湯を沸かして、肉を入れ、網杓子で湯の中で動かす。肉の色が変わったら、取り出して、調味料を加える。醤油や砂糖、料理用酒などだ。最後に砕いた生のサンショウとごまを加える。
8.油条(小麦粉を棒状に伸ばし油で揚げたもの)に肉を挟んだもの

 油条を二つに切り分け、五センチほどの長さに切る。赤身と脂身を半分筒ずつ混ぜた豚肉の餡を作る。その餡に塩と刻んだねぎ、ショウガの粉、少量のザーサイの粉を加える。短く切った油条の穴の部分に、指でその餡を詰め込む。詰め終わったら、油条を油で揚げて固くし、皿に盛る。サクサクした噛み応えがある。油条にはミョウバンが含まれているので、少し渋みがあり、春巻きを上げたものよりおいしい。
 これは私のオリジナル料理なので、どんな料理書にも載っていない。

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