多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

2021年5月のブログ記事

  • 「急ぎ」について知っておかなければならないこと、随園食単(袁枚

       誰かを招待して一席設けるのなら、三日前にはきちんと約束をしておかなければならない。そうしてこそいろいろな用意や食材の購入に十分な時間があてられる。    突然やってきた客にすぐに食事の用意をしなければならないというのは、長旅を経て旅館に到着したばかりの客がドアの外で待っているのと同じようなも... 続きをみる

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  • 水烏他について、周作人

     斉甘さんが牛乳店で水烏他を食べた時に、「食べた途端にバターかと思った。どうして水烏他と呼ぶのかわからない」と言った。私は食べたことはないが、少し知っている。清時代の風俗を書いた敦崇著の「燕京歳時記」の「十月」という項目に「水烏他、嬭烏他」というのがあり、「水烏他は、加熱して固めた牛乳に砂糖を入れ... 続きをみる

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  • 清潔さについて知っておかなければならないこと、随園食単

     ネギを切った包丁でタケノコを切ってはいけない。コショウをついた臼でオニバスの実の粉をついてはいけない。料理からふきんの匂いがすれば、きっとふきんは清潔ではない。料理からまな板の匂いがすれば、きっとまな板は清潔ではない。孔子も「工、その事を善くせんと欲すれば、必ずまずその器をするどくす」と言ってい... 続きをみる

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  • 中華美味大全、梁実秋作、多田敏宏訳

    中華世界きっての美食家が語る様々な料理 https://r.binb.jp/epm/e1_186706_23052021232911/

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  • カニを食べる(ニ)、周作人

     カニはブルジョア階級の食べ物かどうか?答えるのはとても難しい。正陽楼の勝芳大カニは 確かに高級役人か金持ちしか普段は食べられず、以前の教師だったら金を集めてたまに食べに行くくらいだった。しかし、清の光緒帝の時代、私は南京で勉強していたが、叔父と一緒に煮込んだカニを食べたことがある。そんなに昔の話... 続きをみる

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  • カニを食べる(一)、周作人

     今はカニの季節ではないが、この文は勤孟さんの文を見て、書いた。私はカニのマニアではないが、食べはする。特に変わった食べ方はしない。水煮したものの殻を剥き姜酢につける。自分で殻を剥かないとあまり面白くない。    私は面拖蟹(カニの体を真ん中で切り、上半分を小麦粉で調理し下半分を油で揚げる)という... 続きをみる

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  • マントウ、周作人

     南方の人が北京に来て、誰かに肉マントウを買いに行くように頼むと、ややこしい問題になる。北方では餡の入っているものは包子と呼び、 マントウは餡の入っていないものを指すからだ。 餡の入ったマントウを買いに行ってくれと頼むことは、日本にいる留学生が寮の管理人に「熱い水をください」と頼むのと同じで、どう... 続きをみる

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  • 豚肉、周作人

     各地の民族の食物は、穀物の他に、肉類も風土や習慣によって大きく異なる。たとえば、欧米人は牛を食べ、モンゴル人や回族は羊を食べ、日本人は魚を多食し、中国では豚肉をよく食べる。わたしは豚という 動物は嫌いだが、豚肉の用途が多いことは事実であり、否定できない。西洋料理のレストランや専門店では、牛肉や羊... 続きをみる

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  • 果物の砂糖漬、周作人

     故郷に最も馴染みを感じるのは、他の場所よりいいところがあると思えるからだ。その一つが菓子だ。子供の頃最も馴染みがあった。当初はそんなに思わなかったが、北方に来て見なくなると、寂しさを免れ得ない。その後蘇州のある街で馴染みの菓子を売っている店を見かけ、喜びを禁じ得なかった。買って食べたわけではない... 続きをみる

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  • 香酥餅、周作人

     紹興の塔山に二つの名物がある。 一つは香酥餅 もう一つは芽豆炒めだ。 子供の頃、大人に塔山へ芽豆炒めを買いに行くように言われると、喜んで走っていった。が、香酥餅の場合は少しためらった。香酥餅は塔山の下にしかなく、二つか三つの店が並んでいた。確か、沛国斎何とかという名前の店があったように記憶してい... 続きをみる

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  • ダイコンとサツマイモ、周作人

     中国人が食べる野菜の種類は、たぶん世界最多だろう。もとより歴史の長さがその原因の一つだが、古人が食べていた多くの植物、たとえばワラビや藻などは、現在の市場では見られない。そしてかつては見られなかったものが多く見られるようになった。中国の調理法の特殊さがその重要な原因だ。色々な植物の葉や茎を煮て碗... 続きをみる

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  • 野菜の根、周作人

     「野菜の根を噛むような苦労に耐えれば、どんなことでもできる」と古人は行った。これは有名な話で、筋も通っており、何の問題もない。私がここで言いたいのは、この「野菜の根」とは何かということだ。私の故郷にはハクサイとカラシナはあるが、アブラナはない。これらは煮れば食べられるし、発酵させると一層美味しさ... 続きをみる

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  • 香餻、周作人

     斉さんがある文で香餻は大丈夫だと書いていた。これはいい知らせだ。香餻のような郷土の伝統的な風物が保存されているということは、一般の商工業も衰えていないということだからだ。私は故郷を離れて長いが、香餻のことはずっと思い続けている。麻糍への 思いと同じだ。  香餻は本来簡単なものだが、製造するのは難... 続きをみる

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  • 豚の頭部の肉、周作人

     子供の頃、よく露店で安い値段の豚の頭部の肉を買った。乾燥したハスの葉の上に薄く切ったものを並べ、塩をふりかけたものだった。それだけで食べても美味しかったが、クレープ状のものに巻いて食べると 実に素晴らしく、北方の豚足の醤油煮込み を上回るものだった。  浙江の人民は新年を祝うときに豚の頭を買って... 続きをみる

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  • 鶏卵,周作人

     鶏卵は栄養が豊かで、値段も高くない。まるで豆腐のようだ。動物性の食料の中で、こんなに安いものはない。溜黄菜、 モクセイスープ などの料理が作れるが、窝果児というのもある。変わった名前だが、私は大好きだ。 塩水に割った卵を入れ、さっと加熱して、卵白で卵黄を包むようにする。とても柔らかくて、安い。ど... 続きをみる

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  • 鍋塊、周作人

     昔からの友人東陽仲子さんは籍は呉興だが、陝西で育った。小麦粉食品の中では鍋塊を最も好む。もち米を好んで食べる私と同志だ。私は純粋の江東人ではあるが。  鍋塊の特色は発酵していない小麦粉を使っていることだ。そして、大きくて分厚い。直径六十センチ、厚さが八センチくらいのものもある。それを方形に切り分... 続きをみる

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  • ピーマンを食べる、周作人

     五味(苦い、酸っぱい、甘い、塩辛い、辛い)の中で必要ではないのは辛さだけだ。が、私はまさに辛いものが好きだ。生物の体内には本来塩辛さ、酸っぱさ、苦さ、甘さが備わっており、原料を吸収すれば自前で作れる。人類は文化的な習慣により、最も簡単な生活をしていても塩辛さが必要となるが、その他は省略できる。五... 続きをみる

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