多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

鍋塊、周作人


 昔からの友人東陽仲子さんは籍は呉興だが、陝西で育った。小麦粉食品の中では鍋塊を最も好む。もち米を好んで食べる私と同志だ。私は純粋の江東人ではあるが。

 鍋塊の特色は発酵していない小麦粉を使っていることだ。そして、大きくて分厚い。直径六十センチ、厚さが八センチくらいのものもある。それを方形に切り分けるのだが、実に噛みごたえがある。普通小麦粉製品は発酵した小麦粉を蒸したり焼いたりして食べるのだが、発酵していない小麦粉を用い、水もあまり使わない。それを焼く。鍋塊が基本だが、蒸してマントウ

にしたものもあれば、小さく作って餑餑(ボーボ)

にしたものもある。まずいものでは絶対にない。

 ユダヤ人は過越の祭の時に発酵させていないパンを食べる。「出エジプト記」第十二章によれば、エジプトを出ざるを得なくなった時は時間の余裕も食物の予備もなかったというから、鍋塊と似たようなものだったのだろう。柔らかなパンを食べ慣れている人にはあまり美味しいものではないが、民族の困難を記念しているのだろう。しかし、鍋塊は中国北方ではよく食べるもので、素朴な味わいだ。私は浙江の望江楼の候口マントウを


食べたことがあるが、無料で鍋塊の宣伝をしたいと思っているくらいだ。

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