多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

ダイコンとサツマイモ、周作人

 中国人が食べる野菜の種類は、たぶん世界最多だろう。もとより歴史の長さがその原因の一つだが、古人が食べていた多くの植物、たとえばワラビや藻などは、現在の市場では見られない。そしてかつては見られなかったものが多く見られるようになった。中国の調理法の特殊さがその重要な原因だ。色々な植物の葉や茎を煮て碗に入れ、箸で挟んで食べる。西洋料理ではどうにもならないものでもだ。

 これらの中ではダイコンとサツマイモがとても興味深い。双方とも大きな塊でも食べられるので便利だし、様々な料理に使える。明の人王象晋は、ダイコンは生でも加熱しても、みそで漬けても砂糖や酢で漬けても、燻しても食べられ、野菜の中で最も有益だと書いている。徐玄扈は、サツマイモには十二の長所があると言っている。話が長くなるので要約すると、栽培が簡単で収穫が多く、味が甘美で、生でも加熱しても食べられ、乾燥貯蔵ができて酒も造れるということだ。

 具体的に言うと、私が一番好きなのは坊さんがよく食べるダイコンの豆腐煮込みで、

二番目に好きなのは、田舎の芝居小屋で食べるダイコンの千切り餅

と南京の干しダイコンだ。

 サツマイモは当然煮ても焼いても美味しいが、私の心にはサツマイモの入ったトウモロコシ粥

が残っている。台州の民衆が一年を通して食べるもので、子供の頃台州出身のメイドに何度か食べさせてもらった味が、今でも忘れられない。

 将来人々がステーキや白いパンを食べられるようになればいい。もちろんそのために努力しなければならないが、今苦労しておくことも重要だ。私個人は毎日サツマイモの入ったトウモロコシの粥に干しダイコンが数切れあれば満足だ。毎日本を読んで考え事をし、文を書いて省察する。まるで臨皐亭にいる蘇東坡みたいで、お恥ずかしい。

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