多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

豚の頭部の肉、周作人


 子供の頃、よく露店で安い値段の豚の頭部の肉を買った。乾燥したハスの葉の上に薄く切ったものを並べ、塩をふりかけたものだった。それだけで食べても美味しかったが、クレープ状のものに巻いて食べると

実に素晴らしく、北方の豚足の醤油煮込み

を上回るものだった。

 浙江の人民は新年を祝うときに豚の頭を買って儀式を行う。

が、都市部では長方形の豚肉(肉屋の言う元宝肉)

を用いることが多かった。新年は家で酒宴を催し、そこに肉を多く出したので、家で豚の頭部の肉を食べることはあまりなかった。

 北京でも多く売っているが、私が今まで食べた中で最も美味しかった豚の頭部の肉は、ある友人の家で食べたものだ。彼は山東清河県の出身で、詩を作るのが上手だった。大学を卒業してから色々な学校で教えていたのだが、ある年自分の故郷のやり方に沿った新年の宴会を催し、そこに招待してくれた。山東のマントウを使用したものだった。質のいいマントウに豚の頭部の肉を挟んで食べたが、

たとえようのないほどの美味だった。主人は詩を詠んでもてなしてくれたが、その一部を今も覚えている。「早起きして茶を飲み新聞を読む、急いで家を出て豚の頭部の肉を買いに行く」というものだった。清河では、「水滸伝」も有名だ。登場人物の一人武松が清河の出身だというので、清河の人は特別に興味を持っていた。

×

非ログインユーザーとして返信する