多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

火腿(中華ハム),汪曾祺

 雲南の宣威火腿と浙江の金華火腿は共に有名で、甲乙つけがたい。金華火腿は多くの人に知られ、種類もも等級も多い。「雪舫蒋腿」は有名だ。より高級なのは、竹の葉でいぶした「竹葉腿」というものだ。宣威火腿はそんなに凝っておらず、なんとなく火腿と呼ばれている。宣威ではそれぞれの家で火

腿を作っているが、集中して売っているのは昆明だ。正義路の東側に火腿を売っている店がある。丸ごとも切ったものも売っており、火腿骨や火腿油も売っている。上海の金華火腿を売る店では「火腿脚爪」を時々売っているが、火腿油を単独で売っているとは聞いたことがない。火腿骨でスープを煮たり、火腿油で豆腐をじっくり煮込んだりすれば、とても美味しいだろう。

 火腿は味を向上させる調味料としてよく使い、単独で食べる時は蒸して薄切りにする。金華火腿は部位によって「油頭」、「上腰」、「中腰」に分けられ、それより下は「脚爪」と呼ばれる。昆明の人が火腿を食べる時はふくらはぎから肘までの部分を特別に重んじ、「金銭片腿」とも呼ぶ。円形の切り口の真ん中が赤身肉で、周囲が脂身、それに薄い皮がついている。大西門外にあまり大きくはない食堂がある。

そんなに整っているわけではないが、品揃えは豊富で、必ず「金銭片腿」を置いている。馬を駆る運送屋の最大の好みの品だ。その食堂の主な顧客は馬を駆る運送屋なのだ。彼らが中に入ると、他のものを頼まぬうちに、まず「金銭片腿を一皿」と注文する。

 火腿が主材料ではないが、火腿なしでは作れぬ昆明料理もある。「ライギョのはさみ揚げ」がそうだ。二片のライギョ(ライギョは生きているのを殺す)の肉に、赤身と脂身の混じった火腿を一片はさみ、平底鍋に置き、とろ火で加熱する。調味料は一切使わない。言葉にできないほど美味しい。東月楼の名物料理だ。東月楼は昆明の伝統ある店だが、今はもうないそうだ。

 昆明吉慶祥の火腿月餅は素晴らしい。今年の中秋、北京に運送されてきたのを買って食べたが、昔のようなおいしさだった。

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