多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

台湾、豚足食べ歩き、焦桐

豚足についていえば、私は汁につけて煮たものと焼いたものが好きだ。色合いが魅力的だし、調理の際に漂ってくる香りが臭覚をいざなう。臭覚は味覚に訴え、味覚は知覚に語り掛け、様々な美の快感が楽しくせめぎあう。私はかつて台中の「阿水獅豚足大王」の汁で煮た豚足が好きだった。中に入ると、豚足を漬け込んだ、大きくて黒い年代物の甕が目に入る。豚足をそこに漬け込んでから煮込むので、肉質は柔らかく、箸でつまむと骨と肉が分離し、口の中に入れるととろけるようだ。が、阿水獅豚足大王の豚足は塩辛すぎて、香りを圧迫してしまうきらいがある。漬け込んで柔らかくなりすぎているので、冷食には向かない。

 汁につけて煮た豚足で本当に素晴らしいものは、熱食にも冷食にも向いている。私が食べた中では、台北の南京東路にある「富覇王」と屏東県の「海鴻飯店」のものが絶品だった。両方とも、塩辛さも甘みもちょうどいい具合だ。富覇王の豚足には魅了されてしまった。 つけ汁にいったいどんな秘訣があるのだろう?古人は陳皮、ナツメ、ネギ、トウガラシ、酒、氷砂糖、醤油が豚足の味付けの基本だとしているが、それを守っているのだろう。「随園食単」に、むきエビのスープを使用し、酒を加えてじっくり煮込む方法が記載されている。創意に富んでいると思ったので、家で何度か試してみた。が、風味はまあまあだが、富覇王の豚足より口当たりが落ちる。富覇王のものは口当たりがよく、硬さもちょうどいい。富覇王の豚足を食べていると、少年時代のよき友人と酒を飲みながら談笑しているような気分になる。格好をつける必要も気を使う必要もないからだ。その香りと味は、豚足自身とつけ汁のハーモニーによるもので、質朴で純粋、いったん口に入れると、食欲を大いに刺激する。店に座って食べていると、口と舌が衝撃を受け、「ダイエットは明日からにしよう」と思ってしまう。

 海鴻飯店の豚足は一番油っこくない。一律に前足を使用し、沸騰した湯に入れてさっと煮て、冷蔵するという制作過程を経ていることのほかに、特殊な醤と漢方薬をつけ汁に加え、冷却後に切っているからだ。切るのは食べるのに便利だからで、自家製のニンニクを使用したたれにもつけやすい。そのたれと豚足の相性はとてもよく、弾力性に富む肉とニンニクの香りが口の中で見事にマッチする。海鴻飯店の豚足は私たち台湾人の誇りだ。私は家に持って帰って冷蔵庫に貯蔵し、ゆっくり味わっている。
 台北ルーズベルト路の「天然台湘菜館」の焼き豚足はまず漢方薬に漬けるのだが、焼き上がった色は鮮やかで、噛み応えもちょうどよく、独特の香りがする。パイナップルやキュウリの漬物と一緒に食べると、味が一層引き立ち、骨までも食べたくなる。不思議なことに、天然台の味付けは普通は濃いのだが、豚足はそうではない。

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