多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

緑豆、汪曾祺

 緑豆は涼の性があるので、夏に緑豆スープや緑豆粥を食べると暑気を払うことができる。




 緑豆の最大の用途ははるさめを作ることだ。はるさめは中国の特産だろう。ふつうはるさめはスープに入れて食べる。

 外国ではガラス麺と呼ばれている。普通はるさめはスープに入れて食べる。華僑ははるさめをとても好む。故国を思う気持ちを引き起こすからだろう。毎年国内から大量のはるさめが東南アジア各地へ販売され、一律に「竜口細粉」と称されている。華僑はよく「山東粉」と呼んでいる。マレーシアから帰ってきた福建籍の華僑が親戚にいる。彼女の家で食事をすると、必ずスープにはるさめとザーサイを入れてくれる。蘇南の人は「油豆腐はるさめ」をおやつとして好む。とても美味しい。はるさめと豆腐をシイタケのスープに入れたものだ。北京の森中隆という鎮江料理のレストランに銀絲牛肉という料理がある。はるさめを油で揚げて糸状に切った牛肉を炒めたものと混ぜた料理だが、本当に鎮江の料理かはわからない。銀絲牛肉に使うはるさめは純粋な緑豆のものでないとダメだ。そうでないと焦げ付いてしまう。かつて自分の家で作ったことがあるが、はるさめに何かが混じっていたのだろう。油で揚げたら黒い炭のようになってしまった。「アリが気にのぼる」という名の四川料理がある。ミンチ肉とはるさめを炒めたものだ。ある劇団の賄いが不十分で、団員たちの不満が大きくなった。団長が群衆の生活に関心を深めるため、劇団の食堂へ視察に行った。メニューに「アリが木にのぼる」と書いてあるのを見て、「ああ、賄いに問題がある。アリが食べられるわけがない」と言った。こんな人物に団長が務まるのだろうか?


 緑豆をひいて作った麺を「雑麺」という。「紅楼夢」の中で尤三姐が「清水に雑麺を入れましょう。食べてみてください」と言っている。雑麺は羊肉スープによく入れる。清水に入れても美味しくないだろう。この部分がどういう意味か、よくわからない。しかし、雑麺には肉類のスープをよく使う。野菜類のスープのものは食べたことがない。それでは肉を長期間断っている人は雑麺を食べないのだろうか?

 涼粉皮(緑豆の粉で作ったところてんのようなもの)は本来緑豆で作るものだが、現在は緑豆が少なくなっているので、サツマイモの粉を混ぜていることが多い。……

 広東の人は緑豆餡を好んで食べる。昆明の正義路南に広東の人が開いたスイーツの店がある。緑豆餡と胡麻の粥、サツマイモジュースを売っている。緑豆餡と胡麻の粥は美味しいが、サツマイモジュースは大したことはない。


 緑豆の菓子は昆明の吉慶祥と蘇州の采芝斋のものが一番いい。油をよく使い、バラの花も加えている。北京の緑豆菓子は油を使わず、乾燥しているので、食べると喉につかえる。一時期私は胆嚢炎を患い、油を控えねばならなかったので、そういう緑豆菓子を一箱買ってきたことがある。孫娘がとても気に入り、あっという間にいくつか食べてしまった。私には理解できなかった。

×

非ログインユーザーとして返信する