多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

豚足の話、焦桐

 私の妻の母は豚足料理が得意で、客家の伝統の味だった。まずきれいに処理した豚足にニンニクとハッカクを加え、米酒と醤油に三十分浸す。それに加熱した干しタケノコを加えて蒸すというものだ。干しタケノコが豚足の油を吸い込み、本来の味にそれが加わって、とても美味しくなる。

 豚足を焼くのは南方の発明で、浙江一帯では土鍋を使い、金華火腿(中華風ハム)を加え、「金銀豚足」と名がついている。とても縁起がいい宴会料理で、「紅楼夢」にも登場する。もし鉄の鍋で焼くのなら、火が強すぎてはいけない。ことに豚足と鍋が接触するところは盲点なので、随時調整しなければならない。林文月が「飲膳札記」に書いているが、ふたをしてとろ火で豚足を焼く場合は常に用心をし、厨房を離れてはならない。「醤油、氷砂糖などの調味料がは、注意を怠ると焦げ付いてしまうからだ。が、かすかに焦げた豚足は、時としていい味がこもっており、焦げには効果もある」ということだ。

 豚足で最も美味な部位は最も焦げやすい皮だ。「天壇」の豚足料理は想像力を掻き立てる。リンゴをドロドロにして、かまどで六時間じっくり焼く。かまどから出すと、酒石酸が豚足に色つやと素晴らしい口当たりを与えていて、皮は赤くて柔らか、中は白。パクチョイ、皮の赤いダイコンを添えると、見た目もよく食欲をそそる。

 延吉街の「翠満園」の蒸豚足は、私の豚足に対する偏見を変えた。まず豚足を一週間漬けておき、その後二時間か三時間蒸す。塩味がたまり、皮と肉に弾力性が出て、赤身肉は噛み応えがある。べにのような色合いで、人をいざなう香りを放つ。朴訥で浮ついたところのない香りで、噛んだときにだけ穏やかに染み出てくる。豚足のつけたれにクエン酸醤を使い、南方の風味を出している点も面白い。

 ダイズを用いて豚足を焼くのは誰が始めたのだろう。ダイズは豚足をよく盛り立てる。ダイズが豚足の油を吸い込み、豚足自身は豊かでさわやかな口当たりになるのだ。ダイズ自身も素晴らしい味になる。福華飯店の付近をうろつくたびに、「忠南飯館」に行って、豚足のダイズ焼きを頼む。「忠南飯館」はご飯もスープもリーズナブルな値段だが、豚足の品質は全く損なわれていない。手慣れた料理がコックさんのレベルの高さを表現している。

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