多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

イカチチの食べ方、梁実秋

 東興楼に「イカチチ」という有名料理がある。作り方は簡単で、浙江のレストランはみな上手に作るが、北平の東興楼のものが最も優れている。
 俗に「イカの卵」とも呼ばれ、小さくて丸く、薄い。が、実際は卵ではない。魚類の卵があんなに大きいはずがない。あれだけ薄く、均等に切れる人もいない。私はずっと卵だと思い込んでいた。ある年、青島の順興楼で宴会があり、イカチチのスープが出てきた。みんなその美味を褒めたたえた。同席していた海洋魚の専門家が「イカチチはイカの子宮のようなもので、卵を包んでいる胞衣です。それを天日干しにしてから切った


ものです」と教えてくれ、私ははっと悟った。
 イカチチのスープは、澄んだものでなくてはならない。イカチチを水に入れて戻し、洗ってから熱湯でじっくり煮る。その後でんぷんでとろみをつけるのだが、粘りが過ぎてはいけない。テーブルに出そうというときに、コウサイの粉とコショウの粉をふりかけ、酢を少し加える。酸味をわずかにつけて生臭さを消すためだ。

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