多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

花ニラ、汪曾祺

 北京の花ニラは、漬けたあとひきつぶして、汁と一緒にする。羊肉のしゃぶしゃぶを食べる時の調味料として欠かせないが、漬物としても食べられる。干したオキアミとハクサイの煮物を食べるときに、花ニラか、臭豆腐(塩漬けの豆腐を発酵させたもの)か、エビ味噌を蒸しパンやクレープに塗りつけて口に入れるのは、北京の一般家庭では、いい食事だ。

 以前芝居の勉強をしていた時、主食は支給されたが、おかずがなかった。花ニラとピーマン、醤油を木の桶に入れ、そこに湯を注いだものをおかずにしていた。花ニラは当時は安く、空いた碗を持って塩や醤油の店に行き、三分か五分の金を払うと、店員が鉄のしゃもじにかなりの量を入れ、盛ってくれた。現在はガラス瓶に入れていて、量り売りはしない。一瓶一元以上で、高くなった。

 

 雲南の花ニラは北方とは異なる。昆明の花ニラは曲靖のものとは違う。昆明の花ニラは味噌で漬け、トウガラシを多く加える。曲靖の花ニラは白で、とても細かく刻み、干したコールラビを糸状に切ったものと一緒に漬ける。そんなに塩辛くなく、淡い甘みをかすかに感じる。曲靖の花ニラは茶葉を入れる筒に似た白色の陶器の缶に入っている。曲靖に行った時は、必ずみやげにいくつか買う。曲靖の花ニラは、中国の漬物の王様だ。

 私の故郷では、花ニラを漬けて食べることはなかった。まだ蕾の時に、花茎と一緒に摘み、適当な長さに切って、豚の赤身肉と一緒に炒めて食べた。まさに「時節の料理」で、何日か経つと花茎が硬くなるので食べられなくなる。エビ入りクレープと一緒に食べると、とても美味しい。

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