多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

温州の魚料理、林斤瀾

 
 魚の料理法は地方によって、調味料も作り方も異なり、とても種類が多い。私は以前は甘いのが一番だめだと思っていた。漢方薬を使うのは、貴重ではあるが正統ではない。酸っぱい料理では、シーサンパンナのタイ族の「酸魚」が独特の風格だ。濃い味付けでは、四川料理が代表的だ。塩辛さや油っこさ、辛さの中に魚肉の味がする。その反対の薄味派もある。その大部分は沿海地方の水郷で、毎日エビや魚が見られるところだ。
 温州は薄味だと言われるが、あいまいな部分もある。温州では本来の味に重点を置き、魚を洗って煮たらすぐに食べたいと思っているくらいだ。ふだんキグチやタチウオ、マナガツオを食べるときは、塩を振り、刻んだネギとショウガをそえ、蒸してテーブルに出す。本来の形をとどめておく。
 温州の高級なフウセイは、油は垂らすだけだ。
 他のやり方もある。魚の味はするが形はなくなってしまうやり方だ。魚肉団子や魚餅、魚麺などである。
 魚餅は、まず魚肉を細かく切って、ヒシの実の粉と片栗粉を加え、ネギと塩を入れ、ショウガを多くくわえて、しっかりと揉みこむ。楕円形にしたものに、料理用酒と醤油をしみ込ませ、黄金色になったら蒸籠に入れて蒸し、切って皿に並べるのである。じっくり煮込んだ豚の頭部の肉を薄く切って、添える。魚餅と豚の頭部の肉を同時に口に入れる。これを魚餅肉というのだが、味は想像できるだろう。
 四顧橋のそばで売っている魚餅は有名だったが、現在は橋そのものもなく、あの三階建ての木造の小さな建物もない。
 現在も魚餅は売っているが、豚の頭部の肉と一緒に食べることは、若い人は知らないかもしれない。魚餅も「時代遅れ」になってきたようだが、手を抜くようになったからだろうか。
 手抜きが盛んになったのも原因がある。「温州モデル」が喧伝されだしてから、世の中が変わってきたのだ。服を着るにもファッションを論じ、飲食も流行を追う。魚餅は「旧式の粗製品」になってしまった。

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