多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

豆腐の様々な調理法(一)、汪曾祺

豆腐は硬めのものを北豆腐と言い、柔らかめなものを南豆腐と言う。もっと柔らかいのが豆腐脳だ。

豆腐脳より少し硬いものが北京の「老豆腐」と四川の「豆花」だ。豆腐脳より柔らかいものが、湖南の水豆腐だ。

 豆腐を型に入れて圧力を加えたものが、豆腐干だ。

 豆乳を煮た時に表面に凝結した膜を掬い取って陰干しにしたものを豆腐皮と呼ぶ。

 豆腐の最も簡便な食べ方はあえものだ。すぐにできる。あるいは湯がいて豆の臭みを取ってもいい。湯がく時間が長くなると、豆腐が収縮して硬くなるのでよくない。

チャンチンと豆腐のあえものは絶品だ。芽も葉も十分に成長していないチャンチンは赤紫色で、香りが鼻を打つ。湯がくと茎葉は緑色になる。それを取り出して塩を揉み込み、さめたら、みじん切りにして豆腐とあえ、ごま油を数滴たらす。一度食べたら、三年忘れられない味だ。若ネギと豆腐のあえものもいい。若ネギは柔らかくて香りがいいので、豆腐とあえるのにぴったりだ。太いネギとあえてもおいしくない。

 南方人はピータンと豆腐のあえものをよく食べる。北豆腐とピータンをサイコロ状に切って、あえ、おろしニンニクと少量の塩を混ぜる。

 アヒルの卵の塩漬けと豆腐のあえものも南方の料理だ。必ず私の故郷で産する「高郵のアヒルの卵の塩塩漬け」を使わねばならない。卵黄が朱色で油が多いので、豆腐とあえると色の対比が鮮やかで、食欲を大いに刺激する。

他地方、ことに北方のアヒルの卵の塩漬けは卵黄の色が薄く、油も少ないので、おいしくない。

 豆腐を焼く場合、油で煎るケースと煎らないケースがある。 

 北豆腐を長方形に切り、油で両面を煎る。豆腐は油を吸わないので、油が多すぎてはいけない。平底鍋で煎るのが一番いい。硬くなりすぎてはダメで、薄い皮ができて、表面にシワがよると、取り出す。「虎皮」と呼ぶ。

 昆明で最も安い食堂に「小炒豆腐」がある。豚肉のミンチと細かく切った豆腐を炒めて醤油を加え、刻みネギを加える。安くておいしい。

 汪豆腐は私の故郷の料理のようだ。豆腐を指の爪くらいの大きさに切り、エビと醤油のスープに入れて何度か沸騰させ、あんかけにして、大碗に盛る。煮た豚の油をそこにかける。しゃもじですくって、食べる。

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