多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

漢方医の説く節食、節酒(万全)

明時代の漢方医万全(1499-1582)という人が、「養生四要」という書物の中に書いています。この人もずいぶん長生きしています。

<節食節酒のすすめ>

 孔子は養生に注意しており、肉は多く食べても、五穀の気を損なってはならず、「清淡」を大切にしなければならないと言っていた。礼節のためには酒を飲みすぎてはならず、節制のためにはものを食べすぎてはならないと教えていた。普段から健康維持に注意していたのである。それゆえ、自分は病気ではないという自信があったので、康子の贈った薬を飲まず、子路の祈祷を断った。普段から健康に注意せず神様に逆らっていたら、医者や祈祷師も何の役にも立たない。
 人には生まれつきの嗜好があるが、どうすればいいのか。魯晳が羊肉とナツメを好んでいたようなケースだ。が、そういう嗜好が強すぎると、必ず病を招く。キジやハトを好んで食べる人は、皆のどの病気にかかっている。医者が「半夏の毒」と診断してショウガで解毒しなければ、これらの人は食習慣が原因だとは知らずに死んでいくだろう。
 普段の量を大幅に超えて食べすぎると、胃腸を損なってしまう。限度というものを知っておかねばならない。胃腸は、水分と食物をためておく場所だ。限度を超えて食べすぎると胃腸がパンクしてしまい、吐き出してしまう。吐き出せなかったものは消化不良となる。水分がうまく排泄されないと体内にたまり、食物がうまく消化されないと体内に蓄積し、多くの病を誘発する。卲子も「美味しいものを食べすぎると病になり、快楽が多すぎると災いを招く」と言っているが、その通りだ。それゆえ、酒を飲みすぎると、体内の気を逆流させてしまうのである。酒には甘みと苦みと辛みが備わっており、気を熱くする作用がある。苦みは腎によく、辛みは肺によく、甘みは脾によいので、適量であれば人体を保護し、血行を促進する。「詩経」に「春に醸した酒は香り豊かで、老人が飲むと元気になる」と書いてある通りだ。酒自体は健康長寿に欠かせない飲み物で、節度をもって飲むため、古人は「爵」

という小さな器を使用していた。が、大きな器で飲むと体を損なう。船と同じで、積み荷が適量だときちんと運べるが、多すぎると転覆してしまうのである。体に有益だからと言ってどんどん飲むのは、不摂生だ。飲みすぎて酔ってしまうと、まず肺が傷つく。肺は人体の気を運行する器官なので、そこが傷つくと、体内の気が逆流し、吐いたり鼻血が出たりする。危険なことだ。体も悪くなってしまう。飲みすぎは体を損なうと覚えておかねばならない。

 酒は人の情操を陶冶し、血のめぐりを促すものだが、飲みすぎれば人の気を損なって精神を錯乱させ、胃腸を傷つける。それゆえ。昔の禹という王様は油と酒を嫌い、周公は「酒誥」という禁酒令を出し、衛の武公は「賓筵」という詩を詠んで酒にふけらないよう人々を戒めた。しかし、愚かことに、酒におぼれる人は日ごとに増えているようだ。

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