多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

蟹粉湯包、唐魯孫

 北方人の食べる包子

では、天津の狗不理

が素晴らしい。餡が大きくて皮が薄く、油も十分だ。これと比肩できるのは上海五芳斎の小湯包

、南翔饅首

、淮城湯包

くらいだ。

 北平の玉華台が錫拉胡同に店を開いた。

友人の画家陳半丁、名医の江逢春は久しく北平にいる蘇州人だ。彼らが「玉華台の作る淮城湯包は淮城で食べるものより美味しい」と言ったので、一緒に玉華台に行った。

 陳さんが「酒はいらない。湯包だけ持ってきてくれ」と言ったので、大きな籠に六個入れて、持ってきた。各人が熱いタオルで手を拭ううちに、湯包は少し冷める。まず、皮を破って中の汁を吸ってから、食べる。

そうしないと、中の汁で舌を火傷してしまう恐れがある。ひと籠食べると、またひと籠持ってくる。そういう案配こそ、料理人と給仕の腕だ。油のように美味しく、実に素晴らしかった。噂によれば、その後、玉華台はなじみ客以外は「湯包だけ」はやめにしたそうだ。

 台湾に来てから、友人数人と集まり玉華台の湯包について話したが、よだれの出る思いだった。意外にも、屏東の夜の市でまあまあの湯包を見つけた。また、台北に来てから、信義路永康街にある鼎泰堂という軽食の専門店が湯包を出していることを知った。そこの蟹粉湯包


は餡にカニの肉を混ぜており、スープもこってりとして美味しかった。カレー粉を混ぜてカニみそと偽っているような包子とは別物だ。鼎泰堂の店主が言った。「物価が上がると、当然軽食の値段も上がります。が、私たちは妥協しないので、蟹粉湯包は一定のレベルを保ち続けます」店主は山西の人で、最初は油屋で酢を売っていた。湯包を食べるときは、千切りショウガを混ぜた酢につけるのが一番いい。黄色の米酢を使っているという。

 台北市には餃子や包子を売る店は多いが、八割がた合成白酢に水を加えてごまかしている。胃腸の弱い人が食べたら、お腹を壊すだろう。ねんごろに主張しているが、相手にされない。放っておくしかない!

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