多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

ニラ饅頭、梁実秋

 ニラは一番安い野菜の一つで、どの場所にも一年中ある。強烈な匂いがし、嫌いな人は「臭い」と言い、好きな人は「いい香り」と言う。道教では「五葷」の一つとして、ネギやニンニクと同列に扱っている。が、実際はニラが好きな人は多く、雅俗を問わない。

 ある年、青島の住まいの裏山を散歩していたら、数人の石工が石をうがっていた。昼休み近くになると、ニラ餡の餃子が入った大きな蒸籠を二つ天秤棒で持ってきた。

蒸籠の蓋を開けると湯気が立ち昇り、それぞれが手に取って、噛んだ。風が吹くと、ニラのいい香りが漂ってきた。私は思わず立ち止まり、彼らがすごい勢いで食べるのを見ていた。餃子は十五センチくらいだったので、一人二個で足りたようだ。その後、水を二桶天秤棒でかついて持ってきた。みんなひしゃくですくって、「水滸伝」の豪傑のようにがぶがぶ飲んでいた。山東の大男たちがとことん食べ尽くすありさまは、それまで見たことがなかった。

 私のいるところにもよくニラ饅頭を売りにくるが、たいていが山東の人だ。いわゆるニラ饅頭は油で煎っているが、

火であぶるのがスタンダードだ。が、油で煎って黄色く焦げたのもいい。しかし、餡がもう一つなものが多い。大きくて固くなったニラの葉を細かく切らず、春雨やおからを混ぜていて、化学調味料も使っている。中山北路のあるレストランで、かなりいいニラ饅頭を売っていた。あぶったものだったが、すぐ店を閉めた。天厨軽食部のニラ饅頭も有名だ。小さくて丸みがあり、半月形ではない。細やかに作られ、材料もよく、油で煎っている。

 やはり、東興楼のニラ饅頭が一番だ。

皮はちょうどよい厚みと固さで、雪のように白く、油のしみがない。

包み方もきれいで、でこぼこがない。一般の平たい饅頭とは異なり、直径三センチ高さ五センチくらいで、皿に気持ちよく立っている。餡も素晴らしい。ニラの柔らかい葉のみを細かく刻んでいる。蒸し終わると、脂肪分がうまい具合に透明に溶け、味に潤いと柔らかさを与えている。こういうニラ饅頭だったら、お腹がいっぱいでも一個か二個は食べたくなるだろう。

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