多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

冬の台北、麻油鶏(韓良憶)


 寒くなって、北東の風が吹き、冬の雨が悩ましく降り続くと、できたての麻油鶏が恋しくなる。腹がいっぱいになって体も暖まるからだ。

 台湾の伝統的な麻油鶏は、調理法は難しくない。たいていの家庭で作れる。材料は麻油(ごま油)と地鶏、ショウガだけだ。ごま油というのはあぶった黒ごまを圧してとる油のことで、黒に近い茶色、濃厚な香りだ。台湾では、雲林の北港と台南の西港が有名な産地だ。

 麻油鶏は体を暖めるので、冬向きの料理だ。出産直後の女性にとって不可欠ともされている。分娩の時に少なからぬ「風」を吸い込むので、ショウガを使った麻油鶏を多めに食べて「風」を減らさないといけないとの伝承がある。

 

 まず、ショウガを洗って、皮ごとかたまりに切り分ける。それを切り分けた地鶏と一緒に熱湯につけて血などを落とした後、水を注いで表面をきれいにする。

 その後、鍋でごま油を加熱した後、そこにショウガを入れ、弱火で炒める。濃厚な香りが漂ってきたら鶏肉を入れ、表面が黄色になるまで中火で炒める。そして米酒を注ぎ、蓋を閉じてじっくり煮込む。

 米酒は使うが、水も塩も加えないのが伝統的なやり方だ。酔う心配はない。米酒を注いだら強火で四分か五分煮るので、アルコールは蒸発し、酒の味だけが残る。

 が、最近は塩を使ったり、ナツメやクコ、オウギなどを加える調理法も出てきた。伝統的な麻油鶏を愛する私には合わない。

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