多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

餅(へい)を焼く、梁実秋

(ここの「餅」は、「もち」ではなく、小麦粉をこねて焼いた物)

餅は焼くもので、煎るものでも揚げるものでもあぶるものでも、ましてや蒸すものでもない。鉄製の分厚い平底鍋で焼く。なかなか熱くならないが、簡単に冷たくもならないので、餅を焼くには最適だ。西洋式の平底鍋でも焼ける。小さくて使いやすいが、アルミ合金製のものは熱の伝わるのが速いので簡単に冷たくなる。温度のコントロールが面倒だ。



 餅を焼く前に、小麦粉をこねなければならない。簡単ではない。経験のない人がやれば、失敗する。こねるときは湯を使う。湯を使ってうまくこねれば、軟らかいものができる。こねたものはしばらく置いておく。 普通の餅はそんなにややこしくない。薄くて層のあまり多くないのがいい。北平の怠け者の主婦は、自分で作らず、蒸し鍋屋や油屋で買う。その餅に、卵を伸ばして焼いたものを挟み、両手で持って、口を大きく開いて食べる。比類のないほどの豊かな食事だ。



 子供が甘いものを食べたくなったら、蒸し鍋屋に行って糖餅を食べるのが一番手っ取り早い。

別売りの黒砂糖とごまペーストも買う。焼いた餅で黒砂糖とごまペーストを挟み、熱いうちに食べる。形容できないほどの美味しさだ。私は大人になってから、自分の家で糖餅を焼いた。黒砂糖とごまペーストの量を倍にして、幼い頃満たせなかった欲望を満たした。

 葱油餅はどこにでもある。

が、家庭の主婦が作るものがスタンダードだ。北方の料理のうまい家庭の主婦は、作り方が細やかで、一般の食堂のような粗製濫造ではない。一般の食堂のものは油っこすぎる。スタンダードな葱油餅は、層も葱も多いが、油はあまり多くない。小麦粉をこねるときに薄く伸ばし、葱は白9緑1の割合だ。塩は均等にふりかける。鍋の油は少なめで、鍋熱く火は小さくが原則だ。とても美味しいのでおかずは要らない。

 清油餅は、実際は餅ではない。

細い麺を重ねて一つの塊にし、圧力を加えて餅の形にし、鍋で調理する。外側は硬いが中は軟らかい。山東料理レストランのものが一番だ。清油餅一個に、むきエビを煮込んだものか千切り鶏肉を煮込んだものを一碗つけるのが理想だ。

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