多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

熊の掌の食べ方、唐魯孫


 十月二十日顔元叔教授が、また十月二十三日に夏元瑜さんが熊の掌に関する文を発表された。私は昔から食べることが好きなので、往事を振り返り、熊の掌について述べてみたい。

 かつて熱河の高官だった爽良という人が言っていたが、興安嶺にも長白山にもツキノワグマが生息し熊の掌が手に入るが、食べるなら長白山の熊の掌がいいそうだ。


 興安嶺でも長白山でも冬になるとマイナス二十度か三十度になる。が、長白山の夏は蜜蜂が特別に多く、ハチミツも多く産する。不思議なことに興安嶺では蜂の巣はあまり見ない。

 ツキノワグマはハチミツがとても好きだ。長白山の蜂の巣は、大抵地面に倒れた枯れ木の中にある。ツキノワグマは蜜蜂に刺されるのも恐れず、皮が粗くて肉厚の手を巣の中につっこんで蜜を舐める。

 深秋にハチミツをたっぷり食べ、木の穴の中で冬眠する。その時片方の前足で穴の入り口を塞ぎ、もう片方をずっと舐め続ける。今年は左前足を舐め、来年は右前足を舐めるという具合だ。それゆえ熊の掌を調理する時は左と右を別々に煮込む。一冬の間熊が舐め続けた部分には唾液が染み込み、肥えて豊かな味になっているからだ。古人がどうやって熊の掌を調理していたかはわからない。今は煮込む。


 新しい熊の掌はすぐには食べられない。次の年になるまで乾燥させる。新しい熊の掌は水を使わず、ザラ紙で血を拭き取り、石灰を底に敷き、その上に炒り米を分厚く置いた磁器の壺に入れる。入れた後周囲を炒り米でびっしり固め、口の部分を石灰で封じて一年か二年置く。調理はそれからだ。
 壺から熊の掌を取り出してきれいに洗った後、分厚くハチミツを塗って弱火で一時間煮る。その後ハチミツを洗い流して調味料を入れ、弱火でじっくり煮込む。炭火が一番いい。三時間煮込むと香りが鼻を打つので、鍋を開ける。もしハチミツを使わなかったら、三日三晩煮込んでも、食べられるものにならない。


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