多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

窝窝头の歴史、周作人


 北方の雑穀はトウモロコシが中心だ。トウモロコシ粉のことを棒子面とも雑和面とも呼ぶ。トウモロコシのことを俗に棒子とも言うので、その名がついた。南方の人はわからず、誤解してしまうこともある。トウモロコシ粉三ダイズ粉七の割合で混ぜると、とても美味しい窝窝头ができる。低級などとは言えない。が、窝窝头は一般には貧乏人の食べ物とされている。

 浙江東部の台州のような南方では、民衆はよくトウモロコシ粉を食用にしているが、六穀糊と呼んでいる。1897年、私は杭州にいたが、宋という姓の台州出身のメイドがトウモロコシ粉にサツマイモを加えて、よく食べていた。子供だった私も食べたが、とても美味しかった。

 普通はそういう粉をクレープのようにして食べるのだが、窝窝头の場合は円錐形にこねて、中に空洞を作っておく。こぶしくらいの大きさだ。

 民衆がこれを食べ始めたのは早くからだろう。記録が見当たらないが、トウモロコシが入ってきたときまで遡るのではないか。

 窝窝头の起源はわからないが、遅くとも明時代には窝窝头という言葉があったので、三百年以上の歴史を持つ。李光庭著「郷言解頤」の巻五に、劉寛夫の「日下七事詩」が掲載されているが、その末章で「愛窝窝」について言及している。注に「窝窝は、もち米の粉で糖の餡を包み、蒸して作る。へこみを入れるので窝窝と言う。茶館で作るものは、とても小さく、愛窝窝と呼ばれている。明の宮廷に好きな人がいたので、御愛窝窝と呼ばれるようになった」と書いてある。つまり、愛窝窝は御愛窝窝を縮めたもので、窝窝头は明時代にはすでにあったのだろう。すなわち、農民がトウモロコシ粉を用いて作った食品がその名で呼ばれて久しいということだ。

 何事にも同類がいるものだ。北海公園に「彷膳」という名のレストランがあるが、これは御膳房の真似、ということだ。そこの有名料理の一つに「小窝窝头」というのがある。

聞くところによれば、以前は栗の粉を混ぜて作り、宮廷に献上していたそうだ。現在は、ダイズの粉とトウモロコシの粉に砂糖を加えて作っている。それゆえ、北京市では本当の窝窝头の他に、愛窝窝と小窝窝头の二つが歴史に痕跡を残していることになる。「窝窝头」はちっぽけなものだが、意外にも面白い歴史がある。食べ物について考察していけば、多くのことが発見できるだろう。

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