多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

暖鍋、周作人

 田舎の冬の食卓では暖鍋をよく使う。普通の家庭では毎日は無理だが、先祖を祀ったり新年の祝いをしたりするときはたいてい使う。まず、新鮮なシーフードや肉類からいくつかを選ぶ。主に魚肉団子

肉餅子、

ナマコを使い、はるさめとハクサイを鍋底に敷き、ほかにタケノコの薄切りも入れる。
 別のときはともかく、旧正月に墓参りをするときは必須だ。船に二、三時間乗り、寒風の中墓地に行って儀式を行う。船に戻ると、ご飯と酒は暖かいが、料理は冷え切っている。冷え切った料理に囲まれて火鍋

が置いてある。鍋からは湯気が立ち昇っており、各人が扣肉や

扣鶏、

そして鍋の底にサトイモやヤブカンゾウなどを入れる。しばらくたつと、鍋はぐつぐつ煮え初め、様々なものが混じり合って、熱くてとても美味となる。ふだん小さな碗で一人で食べるのとは大違いだ。

 田舎の婚礼では、貧乏な家であろうと金持ちであろうと、「喜娘」という女性を雇って手伝ってもらうのが習慣だ。浙江東部では被差別民の女性を雇っていた。彼女たちには報酬のほかに、婚礼の料理の余りをもらって家に持って帰る権利があった。赤い漆の桶に入れて持って帰り、自分の家で再度煮て食べていたというが、とてもおいしかったそうだ。私はそれを食べたことはないが、暖鍋の経験に照らすと、おいしいというのも嘘ではなかっただろう。(1951.1)

×

非ログインユーザーとして返信する