多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

姜侯に鱠をご馳走してもらったときの唄、杜甫

 姜侯が厳冬に鱠をご馳走してくださった。昨日今日と寒風が吹いて黄河は凍っているので、魚を捕るのは簡単ではない。

漁師が川面に張った氷に穴を開けて魚を捕まえ、料理人に渡す。料理人は音もなくそれを細かに切るが、魚の肉は雪のように白い。骨を刻むと、その身は春のネギのように柔らかい。
 私がほしいままに食べても、魚が美しい皿に次々と並ぶ。年老いた自分に柔らかい部分を勧めてくれるし、ご飯も美味しく、柔らかく炊いてくれる。姜侯の徳に感じ入り、美味と美酒を心から味わった。


 東へ帰らねばならないのだが、なかなか別れ難く、馬に乗っても力が入らない。私はこれから老い衰え、姜侯は出世されるだろう。そのとき、今日のことを感慨深く思い出すだろう。

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