ヤマモモ、周作人
「嘉泰会稽志」巻十七に「ヤマモモ」という項目があり、「ヤマモモの実がなると、好きな人は小舟でそこに行く。舟に酒の樽と採取したヤマモモを並べているのは奇観だ。女性は簪代わりに髪に飾るがヤマモモの実の赤と葉の緑が調和し、とても美しい」と書いてある。
子供の頃ヤマモモの山のことはよく聞いたが、行ったことはない。行ったことのある人に聞くと、ヤマモモを腹いっぱい食べただけで、酒は持っていかなかったそうだ。ましてや女性が簪の代わりにしたとは聞いたことがない。籠に入れて人に贈る習慣は今もあり、子供たちの大好物だ。スイカより人気がある。
私は故郷の田舎を出てかなり経つ。故郷の味には大した未練はないが、ヤマモモだけは別だ。イチゴが市場に出回ると、すぐにヤマモモを思い出す。ヤマモモは生で食べてももとより美味しいが、焼酎に一日浸しておくと、独特の美味となる。
私の故郷の焼酎は北方のパイカル
ほど度は高くないが、茅台酒
に似た独自の香りがあって、ヤマモモを浸すのにとてもいい。洋酒はどうだろう?ブランデーに浸しても悪くないと思うが、試したことがない。
(1939.7)