多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

総理衙門、周作人

 勤孟さんが宜興の土鍋

で作ったごった煮について書いていたが、とても面白かった。普通の一品だけを煮たものより平民的で、しかも土鍋で煮るのは銅や錫の鍋で煮るより美味しいのだ。食べ物をじっくり煮込むには陶器が一番いい。琺瑯引きでもダメで、土鍋が流行っているのも当然だ。

 他の地方はどうか知らないが、北京で最初に流行ったのは豆腐の土鍋煮込みで、

美味しくて栄養たっぷり、土鍋と相性もいい。鶏肉の土鍋煮込み

やフカヒレの土鍋煮込み

も悪くないが、豪勢過ぎて、大きなレストランでないと食べられない。何の意味かわからぬが「両江総督」という面白い名前をつけられていた。

 中華民国以前の北京には「総理衙門」と呼ばれている料理もあった。一部の役人と一部のレストランでしか通用しない名称でそんなに美味しくもなかったので、中華民国の時代になるとこの名称はだんだん使われなくなっていった。これは卵スープ

のことで、北京ではモクセイスープと言われている。卵をスープに入れるだけで作れる。清朝末期の総理衙門は外交事務を管轄していた。本来は「時代に即応した仕事」なのだが、実際は間抜けなことばかりやっていたので、怒りを買っていた。それゆえ何の罪もない卵スープに「総理衙門」という名前をつけてからかっていたのかもしれない。私の知るところでは、玄同さんの兄である銭念劬さんがこの名を好んで使っていたが、発明したのは別の外交官ではないか。が、好んでこの言葉を使っていたことを考えれば、銭念劬さんの発明かもしれない。(1950.11)

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