多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

ヒユナの茎、周作人

 最近田舎の人がヒユナの茎の漬物を持ってきてくれたので、食べた。

ヒユナは私にとっては古くからの友人のようなものだ。南方の平民の生活においては、ヒユナはほとんど一日として欠かすことのできないものだ。最近は北平でも若くて柔らかいヒユナは食べられるようにはなったが、

北方にはあまりない。「斉民要術」の中にも記載はなく、巻十に注釈があるだけだ。が、「南史」には、よく出てくる。たとえば、「王智深伝」の中に智深の「家は貧しかったので、五日間食べ物が手に入らないことがあった。そういう時はヒユナの根を掘って食べた」という記載がある。……私たちの経験に基けば、若くて柔らかい紫ヒユナはもとより煮て食べられるが、糟漬けに使うのは白ヒユナだ。これは私の村の習俗で、他の場所のことはわからない。

 ……

 ヒユナの茎を食べるには、人の背丈ほどの高さに成長して肉付きも良くなったものの葉を取って茎を引っ張りだす。その茎を三センチほどの長さに切り、素焼きの甕の中で塩漬けにする。きちんと発酵したら、生でもいいし、調理をしてもいい。ほとんどの平民の家で作っており、食事時の必需品だ。乾燥野菜、

漬物、

タニシ、

カビ豆腐、

湯葉


などとともに日常のおかずである。ヒユナの茎の漬け汁

の中に豆腐干


や蒸し豆腐を浸すこともある。


山野の趣だ。

 他地方の人が紹興に来た時に書いた文章を読むと、紹興の人は臭いものを食べると嘲笑っているものが多い。が、これは攻めるに足りない。紹興の真ん中より下のレベルの人は貧困に甘んじ、服も食べ物も粗末で、一年中勤勉に働いている。米以外の食べ物は野菜と塩だけだ。水分を含んだ漬物としてはヒユナの茎の漬物が主流で、ほとんど一年中おかずにする。「詩経」に「我に旨蓄あるは、また以て冬をふせがんため」とあるのと同じだ。乾燥した漬物だったら、長期間置いても問題はないが、水分を含んだ漬物はどうしてもにおいが変化する。においが変化するというのは独特の風味を伴うということで、西洋のチーズを引用するまでもない。

(1931.10)

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