多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

童謡の中の食べ物、周作人

 田舎で墓参りをするときに、黄花麦果という食べ物を持っていく。

元は麦の粉を使っていたが、のちに米の粉を多く使うようになり、それにハハコグサを加えて、蒸して菓子にしたものだ。ハハコグサについては「本草綱目」に詳細な記載がある。二月に苗を出し、茎と葉は柔らかく、葉は三センチくらいになり、白いうぶ毛があって、黄色くて小さな花を咲かせる。穂ができて細かな種がなるという。菓子に入れる草の葉としては、ほかにヨモギがある。ヨモギ餻

の方が黄花麦果より美味しいが、民間では、少なくとも子供たちの中では黄花麦果の方が有名だ。菓子屋で作っているヨモギ餻やヨモギ餃子

は手を抜いたもので、ヨモギの葉を使わず、粉の中にアブラナの汁を入れて緑の色をつけたものにすぎない。見た目はいいが、美味しくないので、信用がない。黄花麦果を歌った童謡がある。「黄花麦果はかみごたえがある。門を閉じて一人で食べるものだ。半分でも差し出してはダメ、一個を一人で食べるもの」。

 利己心とケチな気持ちをはっきりと表現している。田舎の子供はおやつが少なく、たまに自家製のおやつ

をもらうと、とても大切にしたというのが実情だ。

 「タニシを肴に酒を飲む、強盗が来ても逃げようとしない」という歌もある。これもユーモアがある。英米人はタニシと聞くとスネイルと言うが、中国人は慌ててそれを蝸牛と訳した。フランス人は蝸牛を食べるそうだが、面白い。実際、浙江東部の田舎ではタニシは安いので、よく食べる。

尾の部分を切り取り、醤油を加えてじっくり蒸し、ネギ油を振りかける。肉料理の一種に数えられる。それを肴に老酒を一碗ゆっくりと啜るのは、とても楽しく、強盗が見ても羨むだろう。(1950.7)

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