杜甫の老いと病
杜甫(712-770)も晩年は様々な病に苦しんでいたようですが、耳が聞こえなくなるのは詩人としてはつらかったのではないでしょうか。
耳聾
私は深山に隠居し、俗世を嘆く老人だ
目はいつ見えなくなるかわからず、耳は先月から聞こえなくなった
耳が聞こえていたら、猿の悲しげな鳴き声を聞いて秋の涙を流し、雀が寂しく鳴けば日暮れに憂うのだが、それもなくなった
山の木の葉が黄色くなって落ちているのを見て季節の推移に驚き、子供を呼び「北風がもう吹いたのか」と尋ねたくらいだから
杜甫は最後は自分の老衰を受け入れたのか、「江村」という詩に次のように書いています。
江村
清らかな河川が村を抱くように流れ
夏の盛りの村は静謐だ
梁の上を燕が自由に飛び交い
水鳥が仲睦まじく戯れ合う
妻は紙に碁盤を描き
子は釣り針を作る
多病な私に必要なのは薬のみ
他は何もいらない