多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

北京の夏の酒、金受申

夏に酒を飲むのは趣豊かなことだ。紀元前三世紀か四世紀の中国人が、夏に氷で冷やした酒を飲んでいたかどうか、麦で造った酒(ビール)を飲んでいたかどうかはわからない。四十年前の北京っ子は、夏に黄酒館に行き、紹興黄酒を飲むのが好きだった。山東黄酒は商売をする人が飲み、山西黄酒は誰も飲まなかった。夏にパイカルを飲むと胸やけがひどくなる。夏は近代的なビールが一番いい。ドイツのビールは簡単に手に入らないが、日本の「太陽」ビールや中国の「五星」ビールもなかなかいい味だ。が、北京のものではない。

 北京っ子は、夏に「四消酒」と蓮花白酒」を飲むのを好む。「四消」は本来薬酒だが、暑気を消すのに一番いい。北京でこの酒を造るのが上手なところは徳勝門内の「北京興酒店」と鼓楼前の「四合義酒店」で、夏の売り上げが最も多い。「蓮花白」はどの酒屋にもあるようだが、白酒に砂糖を加えた偽物だ。北京西郊の海淀のものが最もよく、その中でも北頭路東の「仁和酒店」のものこそ本物だ。本当に白いハスの花を用いて醸造している。「蓮花白」を飲むなら、冷たいものをゆっくり飲むのがいい。酒が唇に触れるたびに、ハスの香りがあふれる。熱いものだとハスの香りがしないし、はやく飲むとハスの香りを味わえるのは最初の一口だけになってしまう。蓮花白を飲むときの注意事項だ。

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