多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

煙草を断つ、老舎(中国、茶・酒・煙草のエッセイから)

 酒を断ったのは医者に命令されたからだが、煙草を断ったのは金銭上の問題だ。たとえば「長刀」一箱が百元では、吸いたくても吸えないではないか!

 二十二歳で煙草を吸い始めてから、今まで二十五年たった。その間に身についた習慣を取り除くのはとても難しい。
 喫煙が有害だから煙草を断ったのではない。煙草を断たねばどうにもならず、やむを得なかったのだ。その日、手元に残ったのは「華麗」一本だけ。また、十元高くなったそうだ!この三日間、毎日十元値段が上がっている!その一本を吸い終わると、灰皿をきれいにぬぐい、マッチを引き出しの中に入れた。煙草を断たねばならない!
 煙草がなければ、文章が書けない。二十数年の習慣だ。この数日、やせ我慢の連続だ!舌の先がしびれ、様々な味のよだれが口の中に湧く。のどがかゆくなり、こめかみが痙攣して痛む!脳に隙間ができてしまったみたいだ!でも、私は煙草より強いのだ。ひどい刑罰を科されても、踏ん張ってみせる!
 ひどい刑罰の後は、悪魔が巧みな言葉で篭絡に来た。「もういいじゃないか。ベテラン作家なんだから、そんなに苦しまなくてもいいよ!それに最近は暑い。煙草を断つのだったら、秋が来て涼しくなってからにしたほうがいいよ!」
 「悪魔よ、去れ!百元も払って、黴臭くて硬く、有害な紙巻き煙草を買うつもりなどない!」
 今日で六日経つが、やせ我慢はまだ続いている!長編小説を書き続けるすべはなくなったが、構うものか!毎日「キャメル」一箱か「華福」二十本を抗日戦争の勝利までずっと届ける、と誰かが言ってくれれば別だが。「人頭狗」や「長刀」なんかに投降することはあり得ないだろう!

×

非ログインユーザーとして返信する