多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

煙草を語る、林徽因(中国、茶・酒・煙草のエッセイから)

林徽因(1904-1955)は、見ての通り才色兼備のお嬢さんですが、煙草を愛好していたようです。

  人の最も親密なパートナーは何か?私の場合は煙草だ。パートナーには、妻、愛人、親友、犬、杖などいろいろある。しかし、これらのものは扱いにくいと常々思う。不注意な言葉や振る舞いに、怒ったり腹を立てたりするからだ。杖の場合は、いつもしっかり持っていなければならない。うっかりすると影も形もなくなってしまう。

 しかし煙草は、ポケットに入れておけば、おとなしくしていてくれる。長い間相手にしなくても、恨み言を言わない。頻繁に構っても、不平を漏らさない。それゆえ、常に身辺にあっても、いかなる負担も感じない。思うままに吸うのも、全然吸わないのも、自由なのである。
 パートナー、最も親密なパートナーである以上、寂しさを感じればすぐに思い出す。ポケットから一本取りだしてマッチで火をつけ、一口吸う。その後口から離し、燃焼している先端部分を凝視する。何かを話してくれるのを待っているように。
 考えが決まらないときは、煙草に助けを求めればいい。煙草を二本の指で挟みあれこれ考えているうちに、いろいろなことを思いつくし、考えも決まる。面倒なことを取り除く際の助けにもなってくれる。たとえば、誰かがあなたのできないことを頼みに来たとする。でも、その人にどう言って断ればいいのかわからない。そういう時に煙草を二口か三口吸えば、頼みに応じられない理由がすらすら口から出てくることがよくある。
 人を待っているときの焦りを抑えるときにも使える。待っているのが愛であろうと金銭であろうとだ。腕時計を持っておらず近くに時計もなければ、煙草で待っている時間を計ることもできるのである。三十分待つ約束だったとする。ずっと煙草を吸い続け、四本目を吸う頃になると、「待ち人」がやってくるだろう。

×

非ログインユーザーとして返信する