多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

張岱、カニを食べる会


 塩や酢などの調味料を加えなくても味がそろっている食べ物といえば、河カニだ。穀物の収穫時期である十月ごろが一番おいしい。殻は突起があって皿と同じくらいの大きさ。こぶし大のはさみと脚の肉は濃密で豊かだ。殻を開けると中身は芳醇な玉のようで、こってりした味が蓄積され、比肩できるものがないほどの美味。
 十月になると、友人や兄弟、親戚と一緒にカニを食べる会を開く。午後に一緒にカニを煮て食べるのだが、一人当たり六匹。冷めると生臭くなるので何度も煮る。テーブルには、アヒルの燻製や乳酪もでる。アヒルのスープで煮たハクサイはまるで玉でできたタケノコのようだ。ミカンやクリ、ヒシの実も食べる。美酒を飲みながら野菜や果物を食べ、杭州で収穫したばかりの新米を味わい、蘭雪茶を口に入れる。今思い起こせば、天上の料理人が作った神様の食べ物のようにおいしい。酒もご飯もおなかいっぱい。少し恥ずかしい。

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