多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

米線(米の粉で作った雲南特産の麺類)、汪曾祺

  米線は米の粉を麺類の形に圧縮したもので、張家口のハダカエンバク麺と同じくらいの太さだが、口当たりは全く異なる。米線はきれいな白で、なめらか、そして柔らかい。色白で細身の女子学生に「米線」というあだ名がつくくらいだ。作業坊から出てきたらもうすでにできており、あとは副材料と湯を加えて、少し煮れば食べられる。昆明の米線店では小さな銅の鍋を用いていて、鍋ひとつで煮るのはせいぜい三碗分だ。米線の副材料はいろいろあり、ミンチ肉以外は、事前に調理がすんでいる。昆明には米線の店が多く、ほとんどの街にある。文林街には二軒ある。
 そのうちの一軒は西側にあり、大西門の近くだ。様々な米線を売っていて、赤身肉をさっと炒めたあと醤油と香料を加えて煮込んだ米線やミンチ肉米線、ブタ皮米線などがある。
田ウナギ米線は田ウナギを切り分け、ニンニクを加えて密封してとろ火で煮込んだものだ。

ブタの皮米線は油で揚げたブタの皮を使ったもので、雲南省にしかないようだ。

青雲街路に羊血米線を売っている店がある。大鍋が二つあり、一つの鍋で湯を沸かし、もう一つで羊の血を煮ている。

羊の血は凝結せず、柔らかな豆腐のようだ。米線を穴杓子にいれて沸騰した湯の中で加熱し、羊の血を大きなしゃもじで米線の上に置く。そこにごまペーストをかけ、コウサイとニンニクをおろしたものをふりかける。辛いのがよければ自分で加える。羊の血を怖がり食べない人もいるが、私は得難い珍しい味だと思う。
 正義路に奎光閣があり、冷やし米線を売っていた。米線に醤油と酢、生野菜とトウガラシを加えたものだ。

夏に冷やし米線を食べると、汗がだらだら出るが、その後は全身がさわやかになる。奎光閣はもう店をたたんでしまった。
 もっとも名高いのは、当然、過橋米線だ。

過橋米線は「鶏肉の蒸気鍋炊き」と並ぶ昆明料理の代表だ。過橋米線は正義路の西側のある店のものが最も有名だ。その店では別の料理も売っているが、客の大部分は過橋米線を食べにくる。店に入って注文すると、給仕がそれぞれの人の前に、生野菜を入れた皿(エンドウの若芽が主)、生の鶏肉、腎臓、魚肉、ブタのテンダーロイン、宣威火腿(中華ハム)の薄切りを入れた平底の皿、白い米線を入れた碗を持ってくる。そしてスープの入った大碗を捧げ持ってくる。そのスープは摂氏百度だが湯気は立っていない。表面を鶏の油が分厚く覆っているからだ。様々な肉片をそこに入れると、すぐに煮えて食べられる。その後米線と生野菜を入れて食べる。肉類はとても柔らかく、スープは新鮮で、実に素晴らしい食べ物だ。

×

非ログインユーザーとして返信する