多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

餌塊(米の粉で作った雲南の食品)、汪曾祺

 餌塊とは米の粉を圧して大きな塊にした後、大きな蒸籠で蒸し、それを薄い長方形に切った食品だ。カルタくらいの大きさに切ってスープで煮たり、肉や野菜を加えて炒めたりする。

餌塊を細い糸のように切ったものを餌絲という。

米線は柔らかくて噛み応えがなく、口に入れるとあっという間におなかに滑り落ちる。餌塊と餌絲は噛み応えがかなりある。あまりおなかがすいていなければ、米線を食べればいい。おなかをいっぱいにして、満腹感を得たいときは、餌塊か餌絲がいい。調味料は米線と同じものが使える。青蓮街で、本来スイーツを売っていた店が、新機軸を出して、ミルクや甘い酒につけた餌絲を売りに出したところ、もうかったと言う。「甘い餌絲なんて食べられるのか?」とも言われたが、甘い餌絲を食べてはいけないという理屈はない。昆明の甘い酒は、香りが豊かで濃厚な味がする。餌塊は騰沖のものが最もいいと、雲南の人は言う。

伝えられるところによると、明の永楽帝が敗走して雲南西部の騰沖に落ち延びたとき、食べ物がなくて飢えた。その時に土地の人が餌塊を炒めて器に入れ、持って行ったところ、永楽帝はあっという間に食べつくし、「これで私は助かった」と言ったそうだ。私も騰沖の炒めた餌塊を食べたことがある。とても薄く、調味料に工夫を凝らしていた。食べてみると、昆明のものとあまり変わらなかった。聞くところによれば、騰沖の餌塊はある土地でとれる上等の米をついて作っているので、質が細かく、他の追随を許さないそうだ。雲南の人なら各地の米の質の違いも分かるだろうが、他の土地の人間にはよくわからない。
 焼き餌塊に使う餌塊は、米の粉で作ったクレープ状のものだ。

楕円形で、手のひらより少し長く、縁が少し厚い。夜によく売っている。真っ赤に焼けた木炭の上に棚を置き、そこに鉄の網のようなものを乗せ、餌塊を広げている。餌塊が焼けると、内側は柔らかく、表面は少し硬くなる。すると竹のへらで、ごまペースト、ピーナッツペースト、油を入れたトウガラシの粉などを次々に塗り付け、巻いて、客に渡す。客は両手で持ち、歩きながら食べるのだが、塩辛さや甘さ、香ばしさや辛さなど様々な味がついたものをおなかに入れるわけだ。

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