多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

肉食はいやしからず(一)、汪曾祺

獅子頭

 獅子頭は淮安の料理だ。豚肉の赤身と脂身を半分ずつ使うが、油っこいのが好きな人は脂身七:赤身三の割合にする。それをザクロの粒くらいの大きさに切り刻み(機械は使わない)、クワイを細かく刻んで混ぜ、みかんぐらいの大きさに丸める。それを油で揚げる。外側に薄い殻のようなものができたら取り出して、水を入れた鍋に入れ、醤油と砂糖を加えてとろ火で煮る。味がしみ込んだら、底の深い皿に置く。

 獅子頭は柔らかいが、ばらばらではなく、口に入れた途端にとろける。

 周恩来総理は淮安にいたことがあり、獅子頭を作れた。かつて重慶紅岩の八路軍の事務所で一度作り、「長い間作っていないんだ。味わってみてくれ」とおっしゃった。話し振りから推察すると、たぶんうまくできたのだろう。

 私は淮安の中学で一学期勉強していたが、食堂で一度獅子頭を作った。油の入った鍋の中で獅子頭が動いていた。それを取り出して碗に入れ、蒸籠で蒸したあと、白菜を添えて出していた。普通獅子頭は醤油を使うが、食堂では使わなかった。その方が本来の味が出せると思う。

鎮江肴蹄

 鎮江肴蹄は塩で漬けたものを巨大な石で圧縮し、脂身も赤身も硬くなるまでそれを続ける。それをじっくり煮たあと、陰干しにして水分を切り、厚めに切り分けて皿に置く。口に入れてもしつこくない。


乳腐肉

 乳腐肉は、蘇州松鶴楼の名物料理だが、詳しい作り方はわからない。私オリジナルのやり方を書く。豚の両わきの肉を六分めか七分めまで煮た後、取り出して、さます。皮のついたまま切り分け、赤身も脂身も肉を煮たスープと一緒に鍋に入れ、氷砂糖と黄酒を加え、蓋をしてとろ火で煮込む。豆腐のように柔らかく、明るい赤色で、ご飯のおかずに最適だ。

腌篤鮮

 上海料理だ。新鮮な肉と塩漬け肉を一緒にじっくり煮込み、タケノコの先端を平たく切ったものを加える。


東坡肉

 浙江杭州、四川眉山、全国至る所にある。蘇東坡は豚肉が好きで、詩にも書いている。東坡肉は醤油で煮たもので、火加減がポイントだ。まず強火で何度か沸騰させ、その後調味料を加え、弱火でじっくり煮込む。スープに小さな泡ができれば、完成だ。肉を煮る時は水を使わない方がいいと東坡は言っており、やむを得ない時は濃い茶か度の強い酒を使えと、提言している。が、水を全く使わないと焦げ付いてしまう。でも、多すぎてはダメだ。大量の黄酒を使うのがいい。揚州の煮込み肉は、コーリャン酒を少し加える。私は濃い茶を使ったことがあるが、特に味に変化はなかった。

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