多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

魚は我が欲するところなり、汪曾祺

ハタ

 私が最初にハタを食べたのは、1947年だ。ベトナムのハイフォンで華僑が経営しているレストランでのことだ。興味ある食べ方だった。大きなハタを一匹醤油で煮て、生のハッカの葉を添えていた。隣に座っている人の真似をして、一口ハタを食べるたびに、ハッカの葉を数枚噛んだ。ハッカの葉が口に残った魚の味を消し去り、次に魚を口に入れると、とても新鮮な感じがした。こういう食べ方は国内にはないようだ。ベトナム人はハッカを好む。華僑のレストランのこの組み合わせは、ベトナム人の影響を受けたのだろう。 

 ハタは、そのまま蒸しても美味しい。

鳜鱼(ケツギョ)

 ハタと比肩できる淡水魚と言えば、ケツギョだろう。張志和の「漁父」という詩に「西塞山前白鷺飛び、桃花流水鳜鱼肥ゆ」という一節があるが、これでケツギョは名声が上がった。私の故郷は水郷で魚を産し、ケツギョもとれる。ケツギョは肉が細やかで小骨が少なく、そのまま蒸しても、さっとゆでても、醤油で煮ても、甘酢煮にしても、美味しい。蘇南飯館の「松鼠鳜鱼」は、とてもいい。

1938年、私は淮安でケツギョの油揚げを食べた。1.5キロの新鮮なケツギョを油で揚げたのだが、皮はサクサクして、肉は白くて柔らか、サンショウを混ぜた塩につけて食べ、素晴らしかった。。その時一緒に食べた叔父もいとこも、だいぶ前に世を去った。

タチウオ

 タチウオは肉は細やかだが、小骨が多い。金聖嘆は、タチウオを食べる時小骨が多いのが極めて残念だと言っている。食べるのが下手な人は、容易に喉につかえてしまう。

鎮江の人はタチウオをとことん煮込み、ガーゼで濾した汁に小麦粉を加える。いわゆる「タチウオ麺」だが、とても美味しい。

黄河コイ

 コイは肉が荒っぽく土臭いので、私は好きではない。が、黄河コイは別だ。河南の開封で食べ、その後山東の梁山で食べたが、その名に違わぬ素晴らしい味だった。黄河コイと他のコイの区別は、魚を開いた後内膜が白か黒かで判断する。白ならば本物の黄河コイで、黒だったらニセモノだ。梁山一帯の人はコイをとても重んじ、酒席には欠かさない。コイは、1.5キロくらいのものが食べるのに一番いい。

タウナギ

 淮安の人はタウナギ料理が得意で、様々なものを作る。「烤鳝背」

「熗虎尾」

などの有名料理の他に、炒めたり焼いたりする。タウナギを湯でゆでたあと千切りにして、再びそれを炒めるのが「軟兜」

で、生のまま炒めるのが「炒脆鳝」だ。醤油で煮たものを短く切ったものが「火焼馬鞍橋」、

より太いものが「悶張飛」だ。調理には大量のショウガとニンニクを使い、テーブルに載せた後にコショウを振りかける。量が多くてもいとわない。

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