多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

ソラマメ、汪曾祺

 そろそろ北京に新しいソラマメが出回る頃だ。ソラマメはとても美味しく、ご飯のおかずにもなるし、おやつにもなる。色々な食べ方があって、それぞれ美味しい。

 私の故郷では、若いソラマメを内部の皮と一緒に炒めた。野菜の塩漬けを刻んだものを少し加えると、美味しさが増した。

赤ヒユを炒めたものを緑の豆に加えると、色合いも鮮やかで、味も良くなった。ある女性が私の故郷に居を移したのだが、大家さんが作ってくれるソラマメ入りの鶏スープがとても美味しいと言っていた。これは田舎のやり方で、都会ではやらない。古くなったソラマメは、皮と一緒にじっくり煮て、塩を加えれば、酒のつまみになるし、それだけでもいい。じっくり煮た大粒のソラマメで数珠を作り、子供の首にかけてやることもあった。子供ば一つずつ皮を剥いて食べ、みな喜んだ。

 江南の人のソラマメの食べ方は私の故郷とだいたい同じだ。上海一帯の人はかなり古くなったソラマメの内部の皮をむき、ごま油で炒めて細かくして食べるが、とても美味しい。粥のおかずにすれば、素晴らしい。

 四川と雲南のソラマメの食べ方は、蘇北や蘇南と似ている。雲南の季節は江南より少し早い。一昨年私は作家訪問団と共に昆明を訪ね、翠湖賓館に泊まった。食事の時はみんな自由に注文した。私は煎ったエンドウと煎った青ソラマメを頼んだが、他の作家に「汪先生は色々な料理をご存じですね!」と言われた。当時北方では青ソラマメは見られなかったので、珍しく思ったのだろう。

 北京の人は新鮮なソラマメをあまり食べない。フジマメとナガササゲはよく食べるが、ソラマメはあまり好かない。北京ではソラマメをあまり植えないので、魅力を感じないのだろう。北京のソラマメは南方から持ち込まれたもので、ソラマメを売っているのも南方人が大部分だ。

 ソラマメを天日干しにすると「老ソラマメ」になる。料理の材料になる。老ソラマメを水に浸すと発芽するが、江南人はこれを「発芽豆」と呼び、塩と香料を加えてじっくり煮て、酒のつまみにする。私の故郷では「爛ソラマメ」、北京では「爛和ソラマメ」と呼ぶ。

私が民間文芸研究会で仕事をしていた時、毎日退勤する時、ある老人が爛和ソラマメを売っていた。七十歳は過ぎていただろう。頭髪も髭も真っ白だった。木の籠を腕にぶら下げ、路地からゆっくり歩いてきて、「爛和ソラマメだよー」と叫んでいた。その後どんな病気かは知らないが、頭があがらなくなり、頭を前に伏せたまま、叫ぶことなく、爛和ソラマメを売っていた。少し経ったら、姿を見なくなった。死んだのだろう。なぜか、爛和ソラマメを食べるたびに、この老人を思い出す。私は何を思っているのだろう?

 人の生活……

 老ソラマメは炒めてもいい。水を吸わせてから炒めたものを「酥ソラマメ」という。私の故郷では「沙ソラマメ」だ。

乾燥させたソラマメを鍋で炒めたものは、とても硬く、北京では「鉄ソラマメ」と呼ぶ。

歯がしっかりしていないと食べられない。

 ソラマメはおやつにもいい。水に浸したものを油で揚げる。北京では」開花豆」と呼び、私の故郷では「蘭花豆」と呼ぶ。

揚げる前に豆粒にナイフで少し切れ目を入れるので、揚げたものは外向けに裂け、形が蘭の花に似ている。

 

 ソラマメは調味料としても使える。四川料理には不可欠だ。

 北京にもうすぐ青ソラマメが出回る。穀雨はもう過ぎた。

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