食憲鴻秘、カニの調理法
カニ調理の秘訣
一、オスカニとメスカニを一緒に漬けてはならない。一緒に漬けると蟹味噌がばらけてしまう。
二、酒とみそを一緒に用いてはならない。一緒に用いるとカニの肉がばらけてしまう。
三、カニは新鮮でハサミに損傷がないものを使うこと。
四、若いカニはつかわないこと。
五、カニを捕まえるときは灯火を照射してはならない。カニを調理するときも灯火を使わないこと。そうしないとばらけてしまう。
カニのみそ漬
濃くて甘みのあるみそを大きな甕の中で蒸らしておく。新鮮で麻縄で縛ったカニに、みそを手ですくってまんべんなく塗りつける。泥の塊みたいになったら甕に入れ、密封する。二ヶ月後に甕を開ける。カニの殻が簡単に剥がれるようになっていたら、食べられる。そうでなかったら、まだ食べられないのでしばらく漬けておく。
カニ一匹ごとに濃いみそを塗りつけるので。みそのうまみがカニの内部に浸透し、特別においしい。
カニの酒糟漬
それぞれのカニの腹の中に酒糟をひとつまみ入れる。甕の底部に酒糟を敷き詰め、その上にカニを置き、さらにその上に甕の口のところまで酒糟を詰める。そして封をする。大きなカニも、この方法で漬けるととてもおいしい。旧暦十月にとれたオスのカニを使うのがいい。
甕の上にソウカクのかけらを置いておくと、カニは長持ちする。カニは必ず麻縄で縛っておくこと。
酔カニ
カニ一匹ごとに、腹の中に塩こしょうをひとつまみ入れ、逆さまにして甕に入れる。そこにいい酒をカニと同じ高さまで注ぎ、サンショウの粒をひとつまみ加える。毎日一回その甕を斜めに揺する。半月経ったら食べられる。この酔カニは、みそで漬けてはならない。
カニの煮方
ショウガ、紫蘇、みかんの皮、塩と一緒に煮るのがいい。一度沸騰させてからカニをひっくり返し、再度沸騰させたら食べられる。カニは煮たら、熱いうちに食べねばならない。食べ終わったら、また新しいのを煮るのだ。みかんをつき潰して醋と混ぜたものにつけて食べるのがいい。