多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

黄河コイの「三喫」、唐魯孫

 現在、台湾北方のレストランでは一匹の魚を幾通りかの方法で食べることがはやっている。実際は一キロ以下の魚だと、頭と尾を取ってしまえば、食べられるところはたいして残らない。中国大陸にいた頃は、毎年活きたコイで儀式を行い、そのあと放していた。清時代の有名人は、コイが龍門を登るという言い伝えを気にして、家ではコイを食べなかった。私は、十五歳か十六歳の頃、初めてコイを食べたが、皮が厚くて肉が粗く、土臭かったので、よくは思わなかった。ある年、河南開封で河川工事の視察をしたが、その土地の有力者劉平一さんが河南の伝統料理の宴会に招待してくださり、そこで黄河コイを味わい、コイの美味しさを体得した。劉平一さんによれば、黄河コイは開封一帯で採れるものが最も美味しいそうだ。黄河の水は河南西部では激しく流れているが、開封に至ると平原になるので、ゆったりと流れ泥もたまる。そこに小さなエビや魚が多く生息し、コイのよき餌になるということだ。食も足り水流も穏やかとなるので、当然コイは肥え太る。当地の人は、1.5キロ以上のコイでないと酒席に出さないという。
 開封のレストランでは、コイを仕入れると、二日か三日は清水の池で泳がせておき、土臭さを取る。それから救い上げて調理し、鍋に入れる。給仕はまずコイを客に見せ、どうやって食べたいかを尋ねる。コイは筋が特別に硬いので、まず大きな筋を取らないと、柔らかく美味しくならない。「三喫」は開封独特の食べ方で、

半分はあまり手を加えずに食べ、半分は甘酢で調理し、その他の部分は千切りダイコンを加えて煮てスープにし、甘酢の汁と麺を入れて食べる。杭州西湖の酢魚麺と同工異曲のやり方だ。河南人の話し方は礼を重んじ、給仕も客に対して非常に丁寧に話す。最初は驚いたが、久しく住んでいると慣れた。

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