多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

ナマコ、梁実秋

 ナマコはそんなに珍しいものでははない。ただし、乾燥ナマコは調理の前に戻さないといけない。それには時間もかかり、簡単ではない(最近は簡単なものも売っているようだ)。それゆえ、以前は家庭料理ではナマコは使わず、レストランや料亭だけだった。

 外国人はナマコを食べないと、かつて私は思っていた。我々がナマコを食べるのを見たら、食いしん坊か野蛮人と思うだろうと考えていた。実際は私の知識が足りず、外国人もナマコを食べる。ただ、食べ方が異なる。我々が食べないナマコ内部の皮を外国人は食べ、彼らが食べない表面の突起のある部分を我々は食べる。生きているナマコを外国の水族館で見たことがある。黒や白、茶色やまだらなど様々な色合いで、見た目はよくなかった、新鮮なナマコは食べたことがない。

 ナマコそのものは珍しくないので、レストランではナマコのコース料理はフカヒレや燕の巣のコース料理よりランクが低い。ナマコを箸でつまもうとしても、口まで持っていくのは簡単ではない。

 レストランに「ナマコの醤油煮込み」という

有名料理がある。淮揚料理のレストランのものが一番いい。五十年前、北平の西長安街に十数軒の大小の淮揚料理のレストランが並んでいた。みんな「春」という字を店名に使っていた。どの「春」だったかは忘れたが、ナマコの醤油煮込みがとても美味しい店があった。そこでは大小様々な蓋つきの碗を使っていた。そうすれば保温にもなるし、見た目もいい。碗の蓋を開けると、ナマコの醤油煮込みが二本堂々と横たわっている。碗いっぱいの大きさだ。食べる時は箸を使わず、スープ用のしゃもじを使う。碗の中はせいぜい冬筍の千切りが数本添えてあるくらいだ。が、汁は濃く、エビも混じっている。この料理のよさは味ではなく、噛み心地にある。口に入れると、つるっとした、細やかで柔らかな感じだ。柔らかさの中にある程度のサクサク感がある。この料理は、もし火加減を間違えればナマコのしこしこ具合がうまく処理できず、噛みにくくなる。北平を離れてから、スタンダードなものを食べていない。 

 ナマコを冷たくあえるのも、食べ方の一種だ。

夏は誰でも冷たいものが食べたい。そういう時に大皿で食べるといい。ナマコを煮たあと冷やし、細長く千切りにする。細ければ細いほどよく、それを冷蔵庫で保存する。醤油と酢、ごま脂を混ぜたものを小さな碗に入れ、ほかに薄めたゴマペーストと刻みニンニクを用意し、それらをナマコにかけて均等に混ぜる。冷たくて香りもよく、爽やかな食べ心地だ。これは今は亡き私の父が考えたやり方だ。試されてはどうか。

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