多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

(精気を益し、耳目を聡くする)オニバスの実、唐魯孫

 

 北平市内には池が少なく、市の南の金魚池、北の積水潭ではヒシやハス、オニバスは植えていない。什刹海と筒子河、西郊の海淀でだけ植えており、緑と紫が鮮やかだ。聞くところによれば、河に入って採取するのは夜明け前でなければならない。一夜を隔てるとオニバスの実の色が変わり、渋みが増してしまうそうだ。それゆえ、街路で売る人たちはみな「オニバスの実だよ、河から採ってきたばかりだよ」と叫ぶ。オニバス(中国語では鶏頭)の殻には短いとげがびっしり生えていて、メンドリの頭にそっくりだ。てっぺんは緑で、紫の花蕊が鮮やかだ。とげがびっしりなので、商人は特殊な器具で外殻を裂いて、実の具合を見てから売る。若い実は内皮が柔和な黄色で、年を経た実は内皮が緑、若くもないし年も経ていない実を「二蒼」というが、この内皮は緑を帯びた黄色で、最も人気がある。若い実はじっくり煮るとすぐに殻が開く。砂糖を加えたミルクで煮たものは、珠のごとく凝結し、香り豊かで、ハスの実のスープに勝る。

年を経た実の殻は固いので、食べるときはハンマーで割って実を取り出す。歯の丈夫な人は、金のような果肉だという。噛み応えが豊かなのだ。「二蒼」に至っては、清らかな香りが馥郁とし、柔らかで滑らかな甘みがあって、食材にもなる。

 揚鎮に「炒米果」という軽食がある。もち米の粉を細かな粒状にし、ナズナや中華ハムを細かく刻んだものと一緒に炒めたものだ。ご飯にも粥にも合う。ある人がもち米の代わりにニ蒼のオニバスの実を使ったところ、純粋な甘みがあり、とても美味しかった。それを食べながら文を書くと、アイデアがどんどん湧いたそうだ。

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