多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

西施の舌、梁実秋

 

 郁達夫が1936年「福州における飲食と男女」という文で、西施の舌(西施は中国四大美女の一人)について書いている。

 :「閩小記」に書かれている西施の舌がカラスガイの肉を指すかは知らない。が、カラスガイの肉は色が白くて肥えており、さくさくとした味でニワトリのスープで煮るのが適している。楕円形のカラスガイの肉は、色も香りも味も形も素晴らしい。

 「閩小記」は、清時代初期の周亮工という人が福建で仕事をしていた時に記したものだ。西施の舌は貝類に属し、マテガイより小さく、ハマグリより長い。カラスガイだったのか?浅い海の砂の中に産するので、「砂ハマグリ」とも呼ばれる。殻は十五センチの楕円形で、水管が長くて白く、いつも殻の外に出している。その様子が舌に似ているので、「西施の舌」の名がついた。初めて福建に来た人が西施の舌を食べると、みな美味に驚く。実は西施の舌を産するのは福建だけではない。私の知るところでは、天津や青島から福建台湾に至るまで、浅瀬に生息する。

 私が初めて西施の舌を食べたのは、青島の順興楼だ。大碗のすまし汁に尖った白いものが浮いていて、最初は何かわからなかった。

主人が西施の舌だと言ったので、口に含むと柔らかくてすべすべした感じだ。評判通りの味だったが、すまし汁で水管部分だけを食べたので、少し意外な感じがした。郁達夫の書いた楕円形のカラスガイの肉は、西施の舌を丸ごと釜に入れたものだ。現在台湾のシーフード店の西施の舌は、丸ごとを調理して出している。郁達夫は、西施の舌は色も香りも味もカタチも素晴らしいと言っている。が、西施の舌全体はそんなに雅やかな形ではない。美人の名前である「西施」という言葉とはイメージが違うのではないか。

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