多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

スープ入り饅頭、梁実秋

 玉華台というレストランは、堂子胡同の楊家のコックだった人が始めたもので、美味しい料理が多い。中でもスープ入り饅頭は絶品だ。

 饅頭ならどこにでもある。が、それぞれ風味が違う。上海の瀋大成、北万馨、五芳斎の出すスープ入り饅頭は忘れがたいものの一つだ。

一つが口に入るほどの大きさだが、美しい形で、小さな蒸籠に敷いた松葉の上に並んでいる様子は、きれいだ。実際は饅頭の中にスープはあまり入っておらず、

コンソメスープの入った碗がついている。饅頭をスープに入れて食べる人もいる。餡はもとより悪くないが、皮が素晴らしい。硬くも軟らかくもなく、ちょうどよい厚みで、作るにはレベルの高い技術が要る。台北に上海式饅頭を作ろうとした人がいたが、とても難しかったようだ。

 天津の饅頭は遠近に聞こえている。

ことに狗不理は有名だ。


実は狗不理にいかなくても、汽車が天津西駅に停車すると、多くの人が車窓の前まで饅頭を売りにくるので、手を伸ばせばいくつか買える。平たい形で、中には多めのスープ。スープにはミンチと刻みネギ。店で食べる人もいる。出来たての饅頭のスープで背中をやけどした話もある。饅頭の皮を噛み破ったらスープが溢れ出し、手のひらから腕、そして背中まで流れたというが、本当かどうかはわからない。が、天津の饅頭は確かにスープが多いので、食べるときに注意が必要だ。そうしないと、背中はともかく、同じテーブルに座っている人の顔にスープがかかってしまう。

 玉華台のスープ入り饅頭もスープが多い。一つの蒸籠に七つか八つ入ってテーブルに出てくるが、ほかほか湯気が立ち昇っている。食べるときは素早く饅頭のシワの部分をつまむ。そうすると、赤ちゃんに吸われてしなびた乳房のように皮が垂れる。皮が破れていないのを確かめて皿に置き、噛み破って中のスープを吸い込み、飲む。

それから、食べる。経験のない人はあれこれ戸惑い、結局皮を破ってスープを流してしまう。給仕が代わりに取ってくれることもあるが、自らつまみ取り自らスープを吸うことに楽しみがあるのだ。饅頭の皮は小麦粉を加熱して作るが、餃子の皮より硬い。そうしないとスープを包み込めない。でも、スープを飲むのだったら、なぜ饅頭の皮に包み込むのか、よくわからない。

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