多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

杜甫、老いの境地

唐時代の大詩人杜甫は58歳で死んでいますが、晩年は糖尿病など様々な病気を患っていたようです。耳も悪くなっていました。

  耳聾
 私は深山に隠居し、俗世を嘆く老人だ
 目はいつ見えなくなるかわからず、耳は先月から聞こえなくなった
 耳が聞こえていたら、猿の悲しげな泣き声を聞いて秋の涙を流し、雀が寂しく鳴けば日暮れに憂うのだが、それもなくなった
 山の木の葉が黄色くなって落ちているのを見て季節の推移に驚き、子供を呼び「北風がもう吹いたのか」と尋ねたくらいだから


  田舎暮らし
 清らかな河川が村を抱くように流れ
 夏の盛りの村は静謐だ
 梁の上を燕が自由に飛び交い
 水鳥が仲睦まじく戯れ合う
 妻は紙に碁盤を描き
 子は釣り針を作る
 多病な私に必要なのは薬のみ
 他は何もいらない

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