多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

爆双脆,梁実秋

 爆双脆(爆は強火で炒めること)は、北方山東料理レストランの名物だ。が、台湾の北方料理のレストランでは出さない。誰かが事情を知らずに入り爆双脆を注文したとする。そのレストランが無理に作ったとする。出てきた料理は真っ黒でちっぽけ、全然美味しくないだろう。北平の東興楼あるいは致美斎では、爆双脆は料理人の技量を計る料理だ。レベルの低い料理人は作ろうとしない。

 双脆とは、ニワトリの砂肝と羊の胃袋のことだ。双方を旺盛な火で派手に炒めると、赤と白が入り混じり、見た目がいい。口に入れると嚙みごたえとサクサク感が共存し、自分の噛んでいる音が聞こえてくる。ニワトリの砂肝は肥えたものを選び、必ず表面の厚い皮を取り去る。そうしないと柔らかくならないからだ。羊の胃袋は、厚くて肥えた部分を選んで、皮を剥く。羊の胃がなければ豚の胃でもいいが、だいぶ落ちる。砂肝と胃袋に、まず包丁で縦横に切れ目を入れる。油と熱の通りをよくするためだ。この料理は火加減が大切だ。砂肝の方が炒めるのに時間がかかる。鍋に入れたらとろみをつけるが、鍋の把手を持って、食材を空中に放り投げてひっくり返す。それを何度かやって加熱する。これは演技ではない。火加減の調節のためだ。燃え盛る火の前、熱い油が飛び散る中、何キロかの鉄鍋でそれをやる。高度な技術が必要だ。台湾の山東料理レストランが爆双脆を出さないのも無理はない。材料も人材も揃わないのだろう。

 ここで、北平で食べた羊の胃の強火炒めを思い出した。羊の胃で最も分厚い部分の皮を剥く。塩炒め、油炒め、湯がく、この三つの方法で調理したものを食べた。塩炒めはでんぷんを加えず、コウサイと刻みネギを入れるだけ。油炒めは大量にでんぷんを加え、粘っこい。

湯がいたものは、エビの油に浸して食べる。それぞれに良さがある。それらを食べた後、菜種油を使ったクレープと鶏肉の千切りあんかけを食べた。満腹し、肩で風を切って家に帰った。五十年以上経った今でも忘れられない。

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