多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

中山公園のフジ餅、趙珩

 フジの花が食用になることは、今では知らない人が多い。当時、中山公園の西路の茶店では、フシ

の花でフジ餅を作っていた。

長美軒の伝統を引いていたそうだ。このフジ餅はその場で取れた材料で作ったものだ。門前のフジ棚でフジの花が満開だ。

そこから花びらを摘み取り、砂糖漬けにして餡にする。皮はバラ餅と同様に作る。当時、北京の多くのまんじゅう屋でもフジ餅を作り、春にだけ売っていたが、中山公園のフジ餅には及ばなかった。中山公園のフジ餅の特色は二つだ。一つめはその場で摘んだフジの花を使っているので、新鮮で、花の香りと色を保持し、餡も多く皮が薄いこと。二つめは作ったものをその場で売っているので、熱々でサクサクして、味も香りもよかったこと。まんじゅう屋のものとは比べ物にならなかった。

 中山公園の茶店では、午後二時か三時にフジ餅の販売を開始した。花を愛でる人が茶店でジャスミン茶を飲み、一息入れている頃だ。そういう時にできたてで熱々のフジ餅を味わうのはとても素晴らしい。 

 次の日に茶店に行っても、前の日の残り物は売っていない。その場で作ったものしか売らないという規則があるからだ。茶店の椅子で食べるほかに、持ち帰りもあった。

 フジ餅は1960年代に作らなくなった。去年たまたま通りかかったら、店は零落していた。店の女の子に尋ねたら「フジ餅というものは聞いたことがありません」という答えだった。

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