多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

随園食単、火具合について知っておかなければならないこと、袁枚

  食物を調理する際に最も重要なのは火具合だ。つまり火力の大小と時間の長短だ。
 炒め物の場合は強い火を用いねばならない。弱い火で炒めても、柔らかすぎて美味しくないからだ。弱い火でゆっくり煮るのがいい料理もある。そういう料理に強い火を使うと、水分がなくなり、うまく煮えない。最初に強い火を用い、その次に弱い火を用いるのがいい料理もある。スープを濃くするためだ。焦ってずっと強い火を使い続けると、外部が焼けこげ、内部に火が通らなくなる。豚の腎臓

や鶏卵のように、煮れば煮るほど軟らかくなる食材もある。鮮魚やアカガイ

のように長時間煮ると硬くなってしまうものもある。

 肉類をきちんと調理しても鍋から取り出すのが遅れれば、色が赤から黒に代わってしまう。魚だったら、ぴちぴちした味がなくなり、硬くなってしまう。調理の途中で鍋のふたを何度も開けると、泡が容易にでき、香りが逃げてしまう。調理の途中で火を止め、長時間おいてから再び火を入れると、食物から水分と油分がなくなってしまう。特に肉類の繊維組織は加熱で膨張した後ふわふわした状態になり、内部の油脂や香り、栄養分がみな逃げる。火を止めて長時間おいてから再び火を入れるのは、味の損失がとても大きい。。
 道士が秘薬を作るときは九回精錬するが、それを中断してはならない。儒者は中庸を大切にし、過ぎたるも及ばざるもだめだと考えている。料理人たる者、火具合を熟知し、食物の調理に真剣に向き合わねばならない。そうすれば「道」の準則に近づき、自然の規律にも符合する。
 魚を食べるとき、その魚の肉が玉のように白く、形が崩れていなければ、鮮度のいい魚だ。色がピンクを帯び、形が崩れ、弾力がなく、なめらかな食感がなければ、鮮度の悪い魚だ。鮮度のいい魚なのに、火具合がわからず、ぴちぴちした味をなくしてしまうような愚かな料理人は、まことに恨むべきだ。

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