多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

アヒルを食べる話、趙珩

 中国人のアヒルを食べる歴史は悠久だ。二千年以上前のことを書いた「左伝」という史書にも記載されているくらいだ。……
 北京ダックは内外で有名だが、歴史はそんなに長くない。有名な「便宜坊」と「全聚徳」の創業は清時代の末期だ。両店は調理の仕方に違いがある。

今日の一般的な食べ方は、荷葉餅というクレープのようなものに甘口のみそを塗り、切り分けたアヒルの肉とネギを挟んで口に運ぶ。
 アヒルの食べ方はとても多く、紹興や杭州のあたりでは「八宝アヒル」という料理がある。

まず湖アヒルをきれいに洗って腹を開き、中にもち米と細かく刻んだ火腿(中華ハム)、シイタケと干しエビ、ハスの実とタケノコ、オニバスの実、ギンナンなどを詰める。その後、糸でアヒルの皮を縫ってから土鍋に入れ、紹興酒と少量の醤油を加えてじっくり煮込む。
 私の家で八宝アヒルを作るときは、二キロくらいの湖アヒルを使い、決して北京アヒルは使わない。八宝アヒルはもち米アヒルとも呼ばれ、肉も美味しく、とくにアヒルの腹に詰めたものは多大な賞賛を受けている。
 清末に始まった「譚家菜」の一つである「柴把アヒル」は有名だが、美味しいのは確かだ。

まずアヒルをじっくり蒸して、骨を取って肉を残し、細長い形に切り分ける。寧波アオノリを洗って、ぬるま湯につけておく。火腿と冬タケノコ、冬シイタケを帯状に切り、最後に細長く切ったアヒルの肉と、帯状に切った火腿、冬タケノコ、冬シイタケを寧波アオノリで一緒に縛って鍋に入れ、蒸す。蒸し終わったらスープを捨てて、鶏油を注ぎ,とろみをつけて出来上がりだ。縛った柴のように見えるので、その名がついた。手順が複雑なので、現在はなかなか口に入らない。
 香酥アヒルはレストランでよく見られる。

作り方は簡単で、湖アヒルの腹を開いて洗い、調味料と一緒に少し煮た後、油の入った鍋に入れ、黄金色になったら揚げる。塊に切り分けた後、その塊をアヒルの形になるように並べ、テーブルに出す。手順は簡単だが、油で揚げるときの頃合いと油の温度がポイントだ。それをきちんと踏まえないと、サクサクした味にならない。

 東西牌楼の西にある普雲楼は「醤アヒル」で有名だ。

アヒルの肉が黄褐色でキラキラ輝き、皮も肉も軟らかく、塩加減もちょうどいい。その日に作ったものはその日に売り、次の日には絶対に持ち越さない。「アヒルを半分欲しい」と言えば、店員が手早くアヒルを切り分け、清潔なハスの葉で包んでくれる。1950年代後期に上海の浦五房も北京に店を出し、醤アヒルを売り始めた。少し甘みのある味だったが、鮮やかな色合いで、普雲楼の醤アヒルと甲乙つけがたかった。

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